米国の格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は12月5日、ユーロ圏の中の15カ国の国債の格付けを引き下げる方向で見直すと発表した。そのうち、トリプルAのドイツ、オランダ、オーストリア、フィンランド、ルクセンブルクの5カ国は1段階、フランスは2段階下げる可能性があるとしている。しかも、欧州安定化基金の債券(トリプルA)の格下げも検討されており、財政危機に陥った欧州連合(EU)加盟国支援のための資金調達に影響が出てくることは必至だ。
現在、ユーロ圏諸国の財政危機とユーロ危機から脱出するために、独仏を中心にEU内で必死の交渉が行われているが、エコノミストの多くは、その行方にかかわらず、フランス国債は来年初頭にはトリプルAを失うとの見通しを示している。格下げになると、国債ばかりでなく、あらゆる公的機関、地方公共団体や国が出資する大企業の格付けも同時に下がり、資金調達の条件が悪化する。そうした企業に直接の影響が出るかどうかはわからないが、来年の経済成長率も下方修正続きで、経済危機はまだまだ続きそうだ。(し)