モントルグイユ通りはレアール北、サンテュスタシュ教会横から更に北に伸びる道だ。モントルグイユ地区というと主にエチエンヌ・マルセル通り以北を指し、一帯はマレ地区のように17、18世紀の建物が多い。その昔はパリの典型的な庶民的な街であったが、90年代より現代風ながら美しい石畳に道路を整備し、一帯が車両禁止地区となって以降は、セレクトショップやヴィンテージショップが増え、カフェバーも増えファッションフリークの街となった。
映画監督のブルーノさんは学生時代以来ずっとここに住んでいる古株だ。「一言でいうと、ここはゲットーだね。車両禁止のポールに囲まれて保護された地域だ。だから子供のいる家族にも安心だ」。すっかりBOBO化され、更にはカジュアルに見えて実は大金持ちの住人らがたむろするのに少々愛想をつかしているようなブルーノさん。しかし、充実した小売店が並ぶ商店街、そしてどのカフェテラスにも小洒落た面々が溢れているのは決して悪くはない、21世紀パリの光景と思うのだが。
「その昔は〈1948年賃貸法〉のおかげで超庶民的なじいさんばあさんがたくさん住んでいたけど、彼らはもうほとんど一人もいないよ」。確かに昔のパリの中心にはギャバンの映画に出てきそうな年寄りが一杯いたが今はもう目にしない。すっかり時代が入れ替わったのだ。
ブルーノさんは映画を目指しつつも建築家となり20年来建築事務所を運営してきたが、九死に一生を得る数奇な事故を経て人生が変わった。「今までの仕事の悩みやストレスなんて問題でない、生きているって何て素晴らしいんだ!」と第二の人生が始まったのを境に映画づくりに本格的に取り組む。その過程でまた数奇な運命と出会う。ある顔見知りの浮浪者の死をきっかけに映画製作費の出資者が現れる。「信じると不思議な程に大きな力と出会うことがある。そしてその出会いを大切に忘れないこと」と語るブルーノさんの映画は、人間に潜在するあらゆる意識心理を探り映像に表現する。現在彼は新たな作品を制作中である。(久)
映画のポスター。
一日中歩行者が溢れる モントルグイユ通り。
Bruno Mercier さんの映画 の情報とインタビューは www.container606.com
ブルーノさんの映画 のワンシーン。タイトル どおりコンテナー内にての 撮影であった。