彫刻家のササキジュンさんはビュット・ショーモン公園近くのピレネー、ジョルダン界隈に住み、住居とは別に制作アトリエも同地区に構えている。「パリの北、この辺は高台になっていて少し空気がいいよ。東京の下町的な性格で住人たちがこぞって顔見知りになる要素をもっているんだ」。ビュット・ショーモン公園は広い敷地なうえに平らでなく起伏のある公園だ。「坂あり、丘あり、滝あり、洞窟あり、湖あり、谷あり、橋あり…とても気に入っている公園だよ」。園内には可愛いインテリアのBIOレストランと、その昔Tunnel通りにあった人気イタリアン・レストランも存在する。
「ここはベルヴィルもすぐ近く、中華レストラン、アジア食品の買い出しが便利で僕ら日本人にはうれしいね」。パリの北とはいえ、ほんの数分でパリ中心に辿り着けるメトロ11号線も便利である。また、ピレネー駅からジョルダン駅に抜けるベルヴィル通りには昔ながらの食品小売店が豊富だし、数年来パリの中心から移動して来るBOBOたちが増えるにつれカフェやビストロも増々充実し、19区の最もサンパなエリアといえるだろう。
ジュンさんの作品は見る者に新たな発見をさせてくれる。常識概念を切り離して作品を観察すると違ったものが見えてくるのだ。スピードと経済に汚染されている大人たちが、作品を前に違う角度のメッセージに気づいてくれたらうれしいとジュンさんは言う。元来は絵を描いていたのだがそれがレリーフになり、どんどん立体となってきて、素材は鉄にたどり着いた。鉄は研ぎ澄まされて洗練された形に造り上げられ、そのなかに羽、木の実、貝殻など生物の証(あかし)がひっそりと込められている。無機と有機のコントラストである。シンプルでシンメトリーで完璧なバランスの良さを感じるのは、東洋にとって多くの意味を持つ五角形だったり、三位一体など『三』が重要なケルト文化だったり、そこには象形の力が秘められているのだ。(久)
冷たくて温もりのあるもの。
ジョルダン教会。尖塔にはジュンさんの作品にも通ずる造形美が。
アトリエにて。
ジョルダン教会。尖塔にはジュンさんの作品にも通ずる造形美が。
ビュット・ショーモン公園。 市役所側正面口の岩山。元採石場であった公園。
ジュンさんの作品。鉄が基本構造で、均整のとれた美しいフォルムが特徴。