社会党とDSK疑惑の動向。

 次期大統領と目されたストロス=カーンIMF前専務理事のNYでの性暴力容疑による失墜で社会党が大打撃を受け、党員らはマルチーヌ・オーブリ第一書記・リール市長の「肝っ玉かあさん」ぶりに期待した。彼女がDSKの後ガマ候補に? と誰もが虎視眈々(たんたん)としていたが「DSKが起訴されても推定無罪の原則に従うべき」と気もたせの意思表明。彼女は本当に大統領になる気があるのかと党員や支持者も半信半疑の中、6月28日、党内予備選挙への候補登録初日、オーブリが重い腰を上げるようにおごそかに候補者選出予備選挙への出馬を宣言した。
 10月9日、16日の予備選挙に向けて5人余の候補予定者中、セゴレーヌ・ロワイヤル前大統領候補ポワトゥ・シャラント地方圏議会議長は低支持率13%などは無視し、昨年11月から不死鳥のごとく立候補を表明。オランド前第一書記・コレーズ県会議長も3月以来地方遊説を続ける。オランド候補は、衝動型のサルコジ大統領とは対照的に「ノーマルな大統領」を目指し、大統領選第1回投票予想率(6/9-10)トップ(26%)、オーブリ(23%)が追いかけ、マリーヌ・ルペンFN党首(22%)、サルコジ大統領(21%)とつづく。
 「週35時間制」の生みの親、オーブリ(60)は社会主義を貫く「左派メルケル」とみなされ、党内では「威圧的」「辛辣」と評される。オランド(56)に言わせれば「意地悪で嘘つき」「頑固」「四角四面」。週35時間制法案に消極的だったオランド前第一書記についてオーブリは「ずる賢い」「日和見主義者」「ふぬけcouille molle」、08年まで11年間党首を務めた彼は「党を分裂させただけ」「『普通の大統領』にはプラスアルファがなければ務まらない」と手厳しい。が、両者の共通点としたらカリスマ性に欠けることだろう。
 犬猿の仲のライバル同士がここに至る道中、同党幹部同士のいがみ合いが加わる。05年欧州憲法設立協定に関しファビウス元首相は反対派、オランドは賛成派で両者が対立、その恨みは根強い。ファビウスとオーブリ、DSKは昨年マラケシュで「3者協定」を結びDSKを前面に出した。NY事件でシナリオが狂い、ファビウスは最後の切り札、オーブリ擁立にオランドへの復讐を込める。
 もう一人、話題にされるのがロワイヤル候補(57)。彼女とオランドとの間に4人の子供がいるが、彼女の前回の大統領選候補時に彼が第一書記として非協力的だったことや、私生活での彼の裏切りを許さない。またオーブリとロワイヤルは08年第一書記選出時に女同士壮絶な戦いを交わし開票時にオーブリ側に八百長があったのでは、という疑念をロワイヤルは忘れない。怨念を抱える者同士の3角関係がどう絡み合っていくか。
 政治劇にはどんでん返しがつきもの。7月1日、NY刑事裁判所のヴァンス主席検事が、DSKを告訴したナフィサト・ディアロの証言に虚偽があったとして、被告の居住指定や電子ブレスレット装着を解除し、保釈金も取り消し仮釈放した。一方パリでは、5日、作家トリスタンヌ・バノンさん(32)が、03年にパリでDSK取材中に強姦(ごうかん)されそうになったとして提訴した。DSKの性犯罪疑惑の続編はこれから。(君)