そろってパンクロッカー御用達・ドクターマーチンの靴。パリ郊外ガニー市出身の彼と、アルジェリアにルーツをもつナディアさんは、自他ともに認める左派だ。
1997年、アンリ4世校グランゼコール準備校で巡りあう。科学専攻のクラスは男子50人、女子4人。出会ってすぐ気になる存在になったが、受験勉強一筋の怒とうの日々だった。「当時、母からは誰かと付き合ったら殺すわよ! と脅かされていたわ」とナディアさん。社会的地位を得るには、学業第一と叩き込まれてきた。彼女は5区在住ではなかったが、両親の計らいで、中学からアンリ4世校へ。「同世代の子が経験する楽しみを知らずに育ったわ」。選抜試験前は太陽を見る日がなくなり、友人はライバルと化した。やがてセドリックさんは理工科大学へ、ナディアさんは高等師範学校へ進む。本格的につきあい始めるが、パレゾー市、パリのユルム通りと寄宿舎が離れていたのでなかなか会えず寂しい思いをした。
学業も終盤を迎えたころ、米国の大学で研修の話が浮上。それぞれハーバード、MITを選び、晴れて異国で同居。「あんなに自由を満喫したのは初めて!」と、遠い過去を懐かしむ。帰国して1年後、2003年に結婚。彼は母校で研究を続けながら、教鞭をとるが、将来に漠然とした不安を抱えている。一方、彼女のプランは明確だ。2005年一人目の子供を妊娠してすぐ、両親の住む16区のアパートに引っ越した。財務省に勤務するかたわら、二人目を出産。産休明けは企業の戦略マネージャーとして世界中を飛び回る。だが四人は子供が欲しいという。二人にぶしつけな質問をした。子供との生活は愛を殺してしまうのでは?「いつも寝不足だけど愛は消えないよ」という彼に対し、「以前どんな生活をしていたのかさえ、忘れちゃったわ」と彼女。
また、二人の教育観についても尋ねた。「子供は公立じゃなきゃ、平等の意味を知ることができない。そこで戦うことが大切なんだ」と声をそろえる。保守的な16区において、自分たちは少数派だと感じている。(咲)
これから相手に期待したいことは?
「いつも一緒にいてほしい」(ナ)「僕も同じ。いつも、何かの事故に巻き込まれるんじゃないかと不安なんだ」(セ)
前回のバカンスは?
「復活祭の休暇。家族でロワール地方の古城めぐりをしたよ。ブロワ城、シュノンソー城、シャンポール城を見たんだ」(セ)
夢のバカンスは?
「海辺で過ごすゆったりとした日々」(ナ)
「何をしていいのか分からなくなるほど、長い休暇」(セ)
最近、二人で行ったイベントは?
「昨年の8月、オペラ・バスチーユでプッチーニの『ラ・ボエーム』。いつも子供と一緒だから、二人で出かける機会はめったにないんだ」(セ)
お気に入りのレストランは?
Des si et Des mets(63 rue Lepic 18e 01.4255.1961)
「グルテンを一切使用しない店。6年前から突然小麦アレルギーになったけれどここは安心して食べられる貴重なお店よ」(ナ)
カップルとしての満足度を5つ星でいうと?
★★★★★「彼は素晴らしく親切な人。風変わりなユーモアのセンスが私にぴったり」(ナ)
★★★★★「僕の言うことをすべてて理解してくれる人に、初めて出会ったよ」(セ)