MAMこと、ミッシェル・アリオ =マリ外相のチュニジアでの年末滞在がカナール・アンシェネ紙(2/6)で暴露され、彼女の失脚劇が始まった。
12月から「ジャスミン革命」の火が上がっていたチュニジアに内縁者パトリック・オリエ議会関係相と訪れ、ベンアリ前大統領側近の実業家アジズ・ミレド氏(MAM家族と親しく、航空会社 Nouvelairや銀行・数企業を所有)の自家用機でタバルカまで便乗。彼女の両親(父92歳/母94歳)も一緒で、彼らはミレド氏の所有企業SCI株(すでに13%所有)の購入(32万5千ユーロ)に署名しに行ったことが発覚。
市民革命などどこ吹く風、MAMが1月11日、議会で「チュニジアの反乱鎮圧のためフランスの治安力のノウハウを提供したい」と発言したものだから、独裁政権と闘っていたチュニジア市民がMAM外相の傲慢(ごうまん)な発言に激怒。野党は彼女に辞任を迫りメディアの「MAMバッシング」が続く。外相の座にしがみつく彼女の必死の弁明、「数百万のフランス人同様、私もチュニジアに行きます」「友人の自家用機に空席があったので20分だけ便乗しただけ」「ジャスミン革命に驚いた」「休暇中の私は大臣ではない」と言った後、「1日中、1年中、大臣であることには変わらない」と訂正、「親の株購入は関知してない」と苦しまぎれに口走るドジな答弁にさすがのサルコジ大統領も我慢ならず、「私用でも外国に出る時は首相に通知せよ」と教師が生徒に叱るように命令した。
一方、オリエ氏はリビアの事業にも関係し、独裁者カダフィ大佐とじっこんの仲。下院のリビア研究グループ会長でもあるオリエ氏の介添えでサルコジ大統領は07年にカダフィ大佐を国賓として招いた。大統領が固い握手を交わしたカダフィ大佐と息子3人が3月4日、国際法廷により人類に対する犯罪の嫌疑をかけられるとは大統領は予想もしなかっただけに、MAMの公私混同のバカンス疑惑も含めフランス外交の権威がガタ落ち。
02年から国防相、内相、法相、昨年11月に外相と、閣僚ヒエラルキーを矢のごとく昇ってきたMAMは、サルコジ大統領に好かれるタイプではないが議会でも一糸乱れない優等生の答弁でのしてきた。が、彼女のチュニジア疑惑は政府のイメージダウンに拍車をかける。大統領はこれ以上爆弾を抱えているよりはと2月27日、彼女に辞表提出を強要したよう(本人は自らと言うが)。
フランス外交の威信が落ちたいま、最後の切り札はジュペ国防相兼ボルドー市長(元首相)。仏外交の立て直しを彼に任せ、ゲアン大統領府官房長官を国防相にし、35年来の腹心、オルトフ内相(地方訪問中「移民は数人ならいいが多くなると問題だ」の暴言で差別反対団体に訴えられ裁判中)を表舞台から下ろし大統領顧問にし、ロンゲ上院議員を(昨年11月の内閣改造で大統領が閣僚にする約束を守らなかったから)国防相に任命。07年大統領就任以来、内閣改造10回目! この1年で4回!来春の大統領選前、つぎはぎだらけの末期的政権に。(君)