国立映画センター・アルシーヴ部門〈後編〉

膨大な時間と労力をかけ修復される。

ただ今、1919年のトッド・ブラウニング監督作品を修復中。

 11月1日号に引き続き、国立映画センター・アルシーヴ部門を見学。今回はフィルムの修復にスポットを当てる。ここで修復される作品はフランス映画が優先だが、外国作品でも貴重なものは積極的に手がけている。最近心に残った修復は?「1917年製作のジョン・フォードの無声映画『Bucking Broadway』。もうこの世に存在しないと思われていたのに、数年前に寄贈フィルムから発見された」とはアルシーヴ部門代表ベアトリスさん。こちらは現在、ヨーロッパの映画遺産を視聴できるサイト〈Europa Film Treasures〉で無料公開中だ。
 さて古いフィルムがあればすぐに修復に取りかかれる、というわけではない。同じ映画に複数のコピーがあればそのすべてを細かく確認する。10本のうち1本だけ他にないシーンが挿入されているなんてこともザラ。修復担当者は映画の全体像をつかむため、脚本や関係資料を読み込んで挑む。「大変だけど一本一本が特別のアヴァンチュール。さながら探偵気分」とは修復担当者の弁。
 ちょうどトッド・ブラウニング監督作品の修復現場に遭遇。発見されたオリジナルネガはスキャンされ、パソコンを使いデジタルで修復へ。こちらを元にまた新たなネガが誕生する。いまや修復作業もデジタル技術が大いに活かされている。「でもデジタルが修復の仕事を早くさせたと思ったら大間違い。結局、写真を一枚一枚直すのと同じで時間がかかる」とベアトリスさんは釘を刺す。このブラウニングの作品は40分の中編だが修復には数年を要す。現在フランスでは映画『アステリックス』シリーズのように千本近いフィルムのコピーが量産されることも珍しくなく、数カ月後にそのほとんどが産業廃棄物となる中、膨大な時間と労力をかけ修復される一本の映画があるという事実は、もっと知られても良いはずだ。(瑞)


きちんと修復されたか施設内の専用試写室で確認する。


タイトル不明の作品のスチール写真。国立映画センターのサイトで公開し一般に情報を求める。


©Archives françaises du film
寄贈フィルムから発見されたジョン・フォードの無声映画『Bucking Broadway』


2007年からこの状態という
リュミエール兄弟の古いフィルム。まずはゆっくり乾燥させている。