「シャンブル・ドット(民宿)を始めることにしたの」。二人は、1年前、共に新聞社の管理職のポストをリストラされた。
1994年、医療業界誌の編集長だったリュックさんの秘書候補として面接にきたフローランスさん。「白いシャツ、タバコをくゆらす姿、一目で惹かれてしまったの」。しかし彼には妻子が。3年間、思いを胸に秘めたまま働き続ける。そして忘れもしない13年前のある晩、同僚と出かけたナイトクラブでスローを踊った。その日を境に、長きにわたる愛人関係が始まる。泥沼の離婚劇が続く中、2000年から同棲。「ある朝早く、警察官が家にきて尋問されたの。一緒のベッドで寝ていたのかって。まるで映画のようだったわ」とその日を振り返る。彼の元妻は一方的な過失による有責離婚に持ち込む姿勢だった。気持ちはわかる気がする。夫婦関係が冷めていたとはいえ、30年の結婚生活の後、ある日離婚を宣告されたら…。一方で彼の気持ちもわかる。残る人生、愛する人と暮らしたい。リュックさんがリヨンに転勤した半年間、彼女は毎日パリのオフィスまで6時間かけて往復した。
2003年に離婚が成立。36、33、30歳になる彼の子供とも、いい関係が築けた、と彼女は思う。「最初、子供たちは彼女を憎んでいたけど、会ってみたら、意外といい人だったので拍子抜けしたようだ」とリュックさん。「彼の子供を自分の子のように思うわ」とフローランスさん。孫の面倒もみるそうだ。
2007年に二人は結婚。しみじみと幸せそうな彼女の横で、「結婚はCDD(期限つき雇用契約)のようなもの」とクールな姿勢の彼。
ところで二人は出会った日から、いつも同じ会社に勤めている。彼が転職すれば、彼女を呼びよせる。しかし不況のあおりで失業して以来、思う職は見つからなかった。しかし彼女は常にポジティブだ。最近、そろってシャンブル・ドット経営のノウハウを学んだ。今月、ドローム県へ物件探しに出かける。パリ郊外コロンブ市にある山小屋風の家は、もう買い手が見つかったのだから。第二の人生はもうそこだ。(咲)
友人からの結婚祝い。「mon âne(私のロバ)」、「ma marmotte(私のマーモット)」と愛称で呼び合っている
これから相手に期待したいことは?
「別離が訪れませんように」(フ)「見知らぬ土地で、一緒に新しいことを始めるけれど、彼女に期待している」(リ)
前回のバカンスは?
「この一年が私たちにとってのバカンスよ。今まで行ったことのないパリを観光客のように歩いたの」(フ)
夢のバカンスは?
「彼と一緒ならどこでも」(フ)「私は快適さも求めているよ。太陽があって暖かいところがいい」(リ)
最近、二人で行ったイベントは?
「6月にベルサイユ宮殿で行われたオペラ・ロワイヤルのスペクタル。素晴らしかったわ。彼はクラシックファンなの」(フ)
お気に入りのレストランは?
La Taverne de Maître Kanter (102 bis, bd de la République 92250 La Garenne-Colombes 01 47 82 85 50)
「私たちはここの生ガキに目がないんだ」(リ)
カップルとしての満足度を5つ星でいうと?
★★★★★「彼のすべてがいいの」(フ)
★★★★★「彼女がそう言うなら、私も」(リ)