パリの煙突掃除人 — 世界のパトロンに なった気分…。


「君のところの煙突、汚れがたまってたよ~」

 煙突の定期掃除のため我が家にやってきたジャン=クロードさん。パリのあらゆる煙突の煤(すす)を落としてきたが、「拠点の15区なら登ったことがない屋根はない」と豪語する。現在パリには約80人の煙突掃除人がおり彼もその一人。だが20代以下は現在10人ほどだ。「若い人にはウヴリエ(労働者)という言葉が軽蔑的に響くのさ」。彼によるとパリでは6割の家庭はガスを使う。石炭など他の燃料も入れると煙突使用率は約8割。電気だけの家は2割と少数派。つまり煙突掃除は21世紀の今も極めて需要の高いお仕事なのだ。若い後継者がもっとほしいところだ。
 早速彼の仕事ぶりを見学。仕事道具の長い紐にはエリソン(ハリネズミの意味)と呼ばれるトゲ付きブラシと、丸い鉄の重りがついている。ブラシは煙突内の煤をこすり落とす。重りはブラシを安定させながら煙突の奥に下ろすために使う。ジャン=クロードさんはたしかな手つきで、煙突の入り口部分から紐を下し掃除をスタート。命綱も付けないが今まで事故などはなかったのだろうか。「全然!  でも雪の日はさすがに避けるよ」。早速私も彼について屋根の上に登ろうと身を乗り出すと、「今日は危ないからダメ!  スニーカーを履いている時にね」とジャン=クロードさんからダメ出しが。
 というわけで後日、今度は6区レンヌ通りの高級アパートの屋根の上に登らせてもらうことに。ブティックが並ぶ地上とは一転、上空は視界がどこまでも広がる。17区付近では火事らしき煙が上がっている。ひっそりと建つ修道院の中庭だって丸見えだ。「私はこの仕事が大好き。ここに来ると自分が世界のパトロンになった気分も味わえるしね」とジャン=クロードさん。この屋根の上こそ、「パリはわれらのもの」という言葉が一番しっくりする場所であった。(瑞)

●煙突掃除の会社 Perraut :
23 rue Plumet 15e  01.4306.8660


煙突掃除用の長いヒモは約30m。トゲ付きブラシと重りがついている。


オレンジや茶色の植木鉢を
逆さにしたような煙突が
楽しそうに肩を並べる。


17区の方向に火事発見!
パリの事件も一目でわかる。


大ハシゴも大事な道具だ。