フランス映画は・・・
フランス映画は復興している
3年前、セザール賞授賞式のスピーチでパスカル・フェラン監督は「中間映画」という言葉を使って注目された。「現行の映画システムでは大作か低予算かの二者選択を迫られる。ルノワールやトリュフォーに代表されるフランスの素晴らしい部分を担った、予算もほどほどの〈中間映画〉を作りにくい状況であることがフランス映画不振の元凶」と訴えたのだ。その後フェランと彼女の映画人仲間は製作状況をつぶさにリサーチ。具体的な提案を本にしてまとめた。そんな映画人側からの活動も功を奏し、最新の国立映画センター報告書では、2009年のフランス映画は製作費の二極化が大幅に抑えられたことを発表したばかり。1千万ユーロ(約12億6千円)を超える大作は減り、かわりに400-700万ユーロ(約5億?8億8千万円)レベルの〈中間映画〉への資本注入が増加したのだ。カンヌ映画祭でローラン・カンテが『パリ20区、僕たちのクラス』で最優秀のパルムドール、ジャック・オディアールが『Un Prophète』でグランプリを受賞したのも、フランス映画復興の現れとも読める。今後のフランス映画に期待したい。
『Un Prophète』
フランスの異様なコメディ好き
「芸術の国」というイメージからは意外だが、フランスは外国人が思う以上にコメディ好きだ。歴代の仏映画国内興行ランキングはコメディが独占。10位にぎりぎり文豪作品の映画化が滑り込む。
歴代フランス映画ランキング
1『Bienvenue chez les Ch’tis』、2『大進撃』、3『ミッション・クレオパトラ』、4『おかしなおかしな訪問者』、5『陽気なドンカミロ』、6『大追跡』、7 『ブロンゼ3』、
8『タクシー2』、9『赤ちゃんに乾杯!』、10『レ・ミゼラブル』
他の国もそうでは?というと、そんなことはない。
歴代邦画国内ランキング
1『千と千尋の神隠し』、2『ハウルの動く城』、3『もののけ姫』、4『踊る大走査線THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』、5『南極物語』、6『子猫物語』、
7『天と地と』、8『踊る大走査線THE MOVIE』、9『敦煌』、10『ROOKIES-卒業』
歴代アメリカ映画国内ランキング
1『アバター』、2『タイタニック』、3『ダークナイト』、
4『スター・ウォーズ 新たなる希望』、5『シュレック2』、6『E.T.』、7『スター・ウォーズ ファントム・メナス』、
8『パレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』、9『スパイダーマン』、10『トランスフォーマー/リベンジ』
日本はユーモアよりも感動に重きがある様子。一方アメリカはスケールが大きい作品の宝庫。SFXを駆使した派手さで映画がスペクタクルであることを見せつける。フランスが笑いを愛でることには問題なし。だが問題はその質! よく見ると最近は、テーマは大胆に見えても実は当たり障りのないハッピーエンドコメディか低能ギャク満載のお下劣コメディばかり。かつてジャック・タチやベルトラン・ブリエが放ったような異質な笑いは入る余地がない。こんな画一化されたフレンチ産コメディの行く末を思うと、私は全然笑えない。(瑞)