若きバッハの源へ

●Die quellen des jungen Bach
  マルセイユで、6歳からクラブサン(ハープシコード)を学びはじめたというセリーヌ・フリッシュ。バーゼルのスコラ・ カントールムでアンドレアス・シュタイヤーに師事した。得意はやはりジャン=セバスチャン・バッハ。2001年に出したゴールドベルク変奏曲(やはりAlpha)は、グスタフ・レオンハルトもしのぐのではというほどの評判をよんだ。
 このアルバムは「若きバッハの源へ」というタイトルのごとく、修業時代のバッハが、ハンブルグやリュベックなどに聴きに出かけて感銘を受けたオルガン(クラブサン)の名人たちの曲とバッハの初期の曲が交互に並んでいる。
 即興風のトッカータから緊張感溢れるフーガに流れ込むラインケンの曲、コラールの旋律を重ねながらじわじわと心に入ってくるブクステフーデの組曲、北国のどこかメランコリーな語り口が印象的なフロールベルガーの組曲。
 それをそのまま継承したような若きバッハのカプリッチオは、メロディーラインを大切にしていて面白い。最後にバッハのト短調のトッカータ。下降を繰り返すアルペッジョのドラマに続いて二声のインヴェンション、そして緩やかな哀歌が挟まれ、圧倒的なフーガが始まる。垂直に天までかけ昇るようなポリフォニーの力、そこからふつふつとわき上がってくる喜び。フリッシュの演奏は、ゆるぎないテクニックと的確なテンポから生まれる、リズム感、旋律の歌わせ方が素晴らしい。録音も優秀で、ドイツ製クラヴサンの、少し暗めの響きが美しい。(真)

alpha発行。19€。