プルーストを読む楽しみ…
松原陽子さんはパリ第4大学で学び、論文「プルーストとラシーヌ」により2008年にフランス文学博士号を取得。現在同大学の招聘研究員としてパリに滞在中。
「初めて『失われた時を求めて』を読んだのは高校生の時。人間の真実が書かれているこの小説に惹かれました。作品中の一篇『花咲く乙女たちのかげに』という題からも分かるように、プルーストは人間の影の部分を描きだします。たとえばマドレーヌの貝のひだが影をつくる、そのことも象徴的なのです。難解な作家としてプルーストを避ける人がいますが、実はこの作家はサービス精神が旺盛。誰でも感情移入できるようなしかけがしてあるので、ぜひ一度手にとって読んでみてください。初めの一冊としては、作品全体を凝縮しているようなところがある『スワンの恋』がおすすめです。また、ステファン・ユエ氏による漫画版で、絵から入るのもいいかもしれません。この漫画家は、研究者になれるのではないかと思うほど、プルーストの作品に精通しています」
Stéphane Heuet “A la recherche du temps perdu” 全5巻。Delcourt出版。
Anne Borel “La cuisine selon Proust”
『失われた時を求めて』に出てくる食にまつわるシーンを集めた本。
小説の中からの数々の引用には美しい写真が添えられている。最後の50ページは料理とお菓子のレシピ。
Chêne出版。19.9€。