飛行機の修理アトリエ — ゆっくりと 往時の姿を取り戻す。

 1927年5月20日、大西洋単独無着陸横断に成功したリンドバーグを迎えるため、数十万人の市民が大群となり詰めかけた。そんな歴史的舞台となったのがパリ郊外ル・ブルジェの飛行場。現在は航空宇宙博物館と航空ショーの会場として名高い。本日は博物館が月1回の割合で公開する修理アトリエを見学した。
 集合場所に赴くと、還暦は超えていそうなおじさんらが目を輝かせ大集合している。その中に紛れ、アトリエの責任者ピエールさんの話を聞く。「博物館とアトリエは国防省の管轄にある施設。飛行場は戦争の必要から1910年代から使われ始めた」という。博物館は前世紀初頭の飛行機コレクションに強く、その種類はヨーロッパ一。今回はアトリエ見学なので博物館にある展示品とは違った生々しい雰囲気の飛行機がいっぱいだ。「これはポンピドゥやデスタン大統領も乗ったよ」と語るピエールさんの指先には、カラベルと描かれた政府専用機。埃をかぶった飛行機が栄光を忘れ巨体をさらしている。格納庫に入った途端、見学者の間で「これは○○」「あれは○○」と暗号のような機種名が頭上を低空飛行。あまりに意気投合しているのでもともと友人かと思いきや、それぞれ個人参加だという。飛行機マニアの結束はマッハの早さだ。
 格納庫内では部品を作る部屋、機体に使う布を加工する部屋、エンジンを直す部屋などを巡る。17人の社員と研修の若者が日々働いても直せるのは年間約3機。1機の修理に平均3年かかる。入手困難な部品をパズルのように組み合わせながら、飛行機はゆっくりと往時の姿を取り戻していくのだ。隣にいたおじさんが「美しいでしょ?  でも息子にとって飛行機は単なる交通手段なんだから寂しいよ」と漏らした。(瑞)

Le Musée de l’Air et de l’Espace : RER B線 Le Bourget駅、ついでバス152番線 “Musée de l’Air et de l’Espace” 下車。www.mae.org/
見学申し込みはwww.tourisme93.com


発明家ラウル・パテラス・ペスカラによるヘリコプターの前でピエールさん(赤い襟)の説明を聞く見学者たち。


格納庫には飛行機がいっぱい。


大統領を運んだ政府専用機だが、傷みが激しいので直すのは困難だとか。


現在、エンジンは800個以上保管。