●Salif Keita “La différence”
マリ、バマコに音楽活動の拠点を移してからのサリフ・ケイタは素晴らしい。この新作は、レ・ザンバサドゥール時代の名盤は別としても、彼の最高傑作といってもいい出来だ。
4曲目の『Gaffou』を聴いてみよう。ニジェール川のほとりの(これはボクの想像)虫の音から、前作でも参加していたメディ・ハダブのウードが旋律を奏で、マリの弦楽器ンゴニや、ギターが絡んで舞い始めると、ケイタの歌がわき上がる。チェロが波のように動き、女性コーラスがはやしをとり、歌が次第に熱を増し、悲しみが溢れ出る。そしてウードのソロ、歌が戻り、それが宙に消えていくと、虫の音だけが残る。これほど極度に洗練されながらも少しも魂を失っていない音楽は、滅多にあるものではない。このアルバムをアレンジしたパトリス・ランソンに拍手。そして、ケイタの美しいバラード『Folon』が続いていく。
『Seydou』や『Ekolo d’amour』のように思わずアフリカ風ステップを踏みたくなるような曲もいい。ここでは、レ・ザンバサドゥール時代からの相棒のギタリスト、カンテ・マンフィラの役が大きい。『Mandjou』でのような圧倒的なソロはとらないが、どこまでも軽く弾んで旋回していながら、どんどん脳の中に切り込んでくる感じがたまらない!
ラスト『Papa』に捧げられたレクイエムでのケイタの絶唱は比類ない。(真)
Universalmusic France