「私の仕事は研究者とクリエイターの境界にある」と語るパルムさん。彼は紙の製造から作品作りまでを一挙に担う紙のアーティスト。芸術家として自作を発表する一方で、外部からの受注も精力的にこなす。紙の専門家として名高い彼のもとには映画や演劇用の小道具や衣装制作といった仕事も舞い込む。 パルムさんの仕事の全貌に触れるには紙面が足りないので、今回は紙作りの作業に注目。手作り派の彼は、コウゾなども南仏に植えているという。本日はフォルミウムという多年草でデモンストレーション。フォルミウムならばおよそ1キロ使って12平方メートルの紙ができるとか。まず柔らかく煮られた葉の繊維は、「la Pile à Hollandaise」という叩解機に入れられ水の中で分散される。この機械は市販されていないので、やはり手作り品。部品もすべてくず鉄屋などから調達してきたもので、折り畳み車で運べるのも自慢だ。 繊維がよくほぐれ細かな状態になったら紙すきの作業へ。フォルム(日本の「すき枠」に相当)と呼ばれる額にすを張った道具を水の中で揺すり、紙の繊維をすくいとるのだ。和紙製造ではすき枠を水の表面だけで揺らすのに対し、彼の場合はフォルムを水底まで押しつけ激しく動かす。その後は手際よく水を切り、すいた紙を台の上に押しあてて十分圧縮する。これがゆっくりと干されれば、紙が完成する。「紙は媒体として表情豊かに変容してくれるのが魅力なんだ。柔らかい洋服にも固い彫刻にもなってくれるからね」。パルムさんは、紙を変幻自在に操る魔術師のように見えた。(瑞) Parme Baratier : 40 bd de Magenta 10e |
パルムさん作の巨大な紙の手。ランプシェードとして使える実用品だ。
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