手回しオルガン職人

「手回しオルガンは 旅する路上の楽器だよ」
 ピエールさんはフランスにおける手回しオルガン職人の第一人者だ。「noteur(楽譜を作る人)」として、音を生む穴を開けながらミュージックロールを作り、販売している。もともとピアノやファゴットの演奏家であった彼は、曲のアレンジだってお手のもの。さらに手回しオルガン文化の伝道師として、テレビやラジオ出演にも忙しい。演奏活動も活発で、パトリック・ブリュエルと共演したことだってある。
 彼がこの道に入ったのは35年前。偶然パー ティで手回しオルガンを目にする機会があり、自分で試してみたくなったという。彼が活動を開始する以前にも先輩はいたので、早速ミュージックロールの作り方を教わりに行った。しかし「教えてくれることは全部ウソだったよ!」。しょうがないので、自己流で段ボールに穴をあけて作ったら、なんとか音が出た。それから研究にのめり込み、今では彼の右に出る人はいないほどの専門家に。レパートリーは、シャンソンからジャズ、クラシックと幅広い。今では500以上の曲名がカタログに並ぶ。中には「君が代」や「サクラ」など日本の曲も。もちろん定番人気は、パリを題材にしたシャンソンだ。しかし同時に時代は移り変わり、例えばゲンズブールの曲は、すでに古典の趣があるという。
 手回しオルガンはフランス語で「Orgue de Barbarie(バルバリーのオルガン)」。しかし、なぜ「バルバリー」とつくのか、その由来は、実ははっきりしていないという。ストリートオルガンとも呼ばれる手回しオルガン自体は、北ヨーロッパの機械仕掛けの人形から発達したものらしいが、その歴史は謎に包まれている。「でもそこが逆に魅力だよ。どこから来たのかわからない、『旅する路上の楽器』さ」とピエールさん。そしてそんな謎の楽器の秘密に触れるべく、今日も軽快にハンドルを回し続けるのだった。(瑞)
Pierre Charial :  
19 rue Borromée 15e   01.4348.0602


500以上のタイトルの数々はピエールさんの研究の賜物だ


優しく懐かしい音楽が響きわたる。「規則正しく動かすことがコツ」


タイヤ? いえいえ、ミュージックロールとなる紙なのだ


マシーンのおかげで紙がどんどん畳まれていく。


数年前よりコンピューターを使い、プログラムを読み込ませ、穴開け作業。


無事に穴も開いて、ミュージックロールが完成。