今年のフランスのサッカー1部リーグは、7回連続優勝のリヨンが相変わらずトップの座についてはいるものの予断は許せない。3月15日にはパリのPSG を3-1で破ったマルセイユのOMが、1ポイント差で迫っているからだ。そのコーチが、エリック・ゲレッツ。54歳。どこかブルース・ウィリスを思わせる風貌、人がよさそうだが厳しく、話し方もおっとりしているようで単刀直入、そして「現役中、私は馬鹿のごとく走ることができたんだから、他の選手が走れないはずがない」などとユーモアを忘れない。そんな人柄がOMの若い選手たちをリードしている。
1954年、ベルギーのレケムで生まれる。1971年にリエージュのスタンダードというクラブでデビュー。そして38歳になるまで、ベルギーやオランダを中心に、疲れを知らない走りと激しいタックルでおそれられ、ベルギー選抜にも86回選ばれた名ディフェンダー。1992年からはコーチになり、2007年にトルコのガラタサライからOMに引き抜かれた。当時のOMは1部リーグの17位を低迷していたが、それをたちまち3位に引き上げ、今年は優勝候補。「歳をとるにつれ、どならなくなってきている。どなることは弱さを認めるようなものだから。(…)コーチが間違うことだってある。でもこうした失望や落胆と生きる術を学ばなくてはね」。2、3年で退いて故郷に帰り、すでに買ってある農園で、家族や友人に囲まれて過ごす日々を夢見る。(真)