フランソワーズ・ドルト — 子供にも一個の主体性…。

 子供への精神分析治療の研究で名高いフランソワーズ・ドルト。昨年は生誕100周年でメディアもこぞって特集を組んだ。今回はドルト資料館のスタッフ、ソフィーさんに、初心者向けレクチャーをお願いした。
 
ドルトの思想の核となるのは?
 子供も「一個の主体性を持った人間」であるということです。しかし彼女の思想を曲解し、「子供を王様のように扱う」ことと勘違いする人も多いので注意して下さい。
フランスでは、保母さんの対応からもドルトの影響を強く感じる気がするが。
 70年代に彼女がラジオの子育て相談番組『Lorsque l’enfant paraît  子供が登場するとき』を通し、大衆的な人気を得たのが大きいです。今ではドルトの名前を知らない人でも、自然に何かしらの影響を受けているとさえ言えます。  

ドルトが提唱した保育施設「緑の家」とは?
 0~3歳位までの子供とその親が、自由に集える娯楽と出会いの場所で、現在はフランスを中心に世界約300カ所にあります。家庭と託児所の中間に位置し、狭い世界に閉じこもりがちな子育て中の親子を、スムーズに社会に溶け込ませるという目的があります。スタッフには心理カウンセラーがおり、予約も必要なく、匿名で利用でき、利用料も気持ち程度です。

日本には「公園デビュー」という言葉があるが、「緑の家」のように、肩肘張らずに社会にママデビューできる場所がもっとあってもよさそう。最後におすすめのドルトの著作は?
『Lorsque l’enfant paraît』の書き起こし本、『Tout est langage』、『Dialogues québécois 』、『La Cause des adolescents』など読みやすいものが多いです。『L’Image inconsciente du corps  無意識的身体像(邦訳は言叢社)』だけは専門用語が入り難しめですが、彼女の生涯の仕事の集大成で最重要の本。実は私もすべてを理解していませんが、読む度に発見があります。ちなみにドルト本は世界25カ国語で翻訳されているのに、英訳はほぼ皆無。出版社の都合があるようです。

やはり世の中、子供より大人の都合の方が厄介ということか。本日はありがうございました。(瑞)

●緑の家のリスト    www.francoise-dolto.com/liste.htm


生涯にわたって信頼を寄せ合っていたフランソワーズ・ドルト(左)とジャック・ラカン。
Archives Françoise Dolto


資料の山に囲まれたスタッフのソフィーさん。
「未公開の資料もまだまだあります」


『Lorsque l’enfant paraîtは、『ドルト先生の心理相談』シリーズ全3冊となってみすず書房から出ている。