略名 DSKこと、ドミニク・ストロス=カーン国際通貨基金IMF専務理事が今年1月にスイスで知り合ったアフリカ担当のハンガリー人女性、ピロスカ・ナギ氏と不倫関係にあったことを、10月18日付Wall Street Journalが暴露した。
2月以来、彼と配下女性との不倫の噂が立ち始めていたが、彼女の夫でアルゼンチン人のマリオ・ブレジェIMF経済担当は、私生活の問題を公にするのを避けていたという。
同基金人員削減策のため600人の転職希望者の中にナギ女史も含まれていた。彼女は7月にロンドンにある欧州復興開発銀行に移ったが、その際にDSKの特別の配慮があったかどうかという疑いが浮上。それだけではない、よからぬ噂の渦にまき込まれた DSKの専務理事としての適性・能力を審議する特別審査会が開かれた。そのメンバーの一人、ロシア人モジン氏はもう1件、フランス人研修者ビエ嬢の数カ月間の研修条件にも不審の眼を向ける。彼女は社会党でのDSK支持者で彼のお気に入りの部下。
しかし、なぜモジン氏がそれほどDSKのアラ探しにやっきになっているのか。昨年9月にサルコジ大統領がIMF専務理事後任にDSKを推薦し、彼が選ばれたことに反対したのもモジン氏で、その恨みは根が深い。国際官僚の間で不倫問題は格好の武器になり得るわけだ。昨年、ウォルフォヴィッツ前世界銀行総裁も配下の女性行員と関係を保っていたため、昨年5月に辞任に追い込まれている。
しかし、社会党の大物、DSKを国内陣営から引き離し、家康流にNYに「人質」として飛ばせたサルコジ大統領の魂胆もなかなか。 DSKをアメリカに留めたまま、次期社会党第一書記の座獲得戦で激しい内部分裂を続けている社会党をさらに弱体化させるための工作でもあったのだ。
任期5年のIMF専務理事の報酬は年間手取り420 930ドル、さらに国際高級官僚に見合う生活水準維持費として75 350ドル、交際費や旅費はIMFが全額負担。元テレビ討論司会者アンヌ・サンクレール夫人はパリ-NY間を行ったり来たり。女に目がないといわれるDSKをめぐる不倫話は自業自得? サルコジ大統領も彼をNYに送り込んだ時、フランスは寛大だが、ピューリタンの国、あちらでは特に高官の品行に対しては厳しいから気をつけるようにと忠告したとか。
10月25日、IMF理事会は「同問題は遺憾だが、解釈上の誤りがあった。如何なるセクハラも優遇措置も権力乱用もなかった」と不倫疑惑を晴らし、訓諭にとどめた。本人が職員と夫人に二度も謝ったということも裁量に影響したよう。
不倫問題で威信が揺らいだDSKは、不慮の汚点を挽回するため、世界金融危機にあえぐ発展途上国を救うため、IMFの拡充・改革に全力をそそぐ意思だ。(君)