モントルイユにあるスモークサーモンの製造アトリエSAFAは、従業員40人ほどの小さな会社。だが、画期的な発見で、食の分野に大きな貢献してきているのだ。創業は1926年。創始者リュバン氏はポーランド出身で、初期は東欧から多くの魚を仕入れていた。当時は冷蔵庫もなく魚の保存が大変。ところがある日、彼は偶然から、22~28度の低温でゆっくりとくん製にする〈Fumaison à froid〉という方法を発見した。そのおかげで、ムチムチとした食感と美味が保たれるスモークサーモンの製造を実現したのだった。現在では、広く一般にも使われている方法になったという。 そして、4代目である現在のディレクター、ステファンさんも先駆的な発見をした一人だ。「15年前、市場を席巻するノルウェー産サーモンの質が低下していることに気づいた。そして良質のサーモンを求め世界中を旅し、出会ったのが、アイルランドにあるクレア島での養殖だった」。クレア島近辺は海流が大変強いため、魚が常に泳ぎ回ることができる。だからノルウェー産に比べ脂肪分が半分になるという。さらにオーガニック飼料のみによる養殖で、当時は、「Bio」の概念がほとんど根付いていなかったフランスにおいて初めて、Bioのスモークサーモンを販売することに成功。農林水産省からは、農事功労賞のシュヴァリエ賞も受勲。「でも活動を認定してもらうまでに7年もかかった。ここはフランスだから」と、笑う。 今ではBio製品の売り上げが、全売り上げ高の6割に迫る勢い。「大企業による大量生産品に勝つには、品質を守ることだけ。Bioは時代の要請でもある」。このかたくなな姿勢は、味にも如実に現れる。それはお客がよく知っている。クリスマス前には、普段は物静かな郊外の風景に溶け込む小工場の前に、評判のスモークサーモンを求める長蛇の列が伸びるのだから。(瑞) 130 rue de Rosny 93100 Montreuil 01.4287.2020 |
サーモンはたっぷりと塩をまぶされた後、紐で吊り下げられて干され、その後ゆっくりとくん製される。 中骨の一本一本を小さなハサミで抜いていく。骨が抜きにくければ、魚がよく成長したために、身がむっちりとしておいしい証拠だ。 専用の包丁で、できあがったスモークサーモンを薄くスライス。「別に秘けつはない。素材が命!」 BIO認定のマークがさんさんと輝く。 |