王女のたっての願いで王は王女の妹を迎えにいく。初めて会う妹の美しさに心を打たれ、自分のものにしようと、抵抗する妹に暴行を加え、望みがかなった後は王女に告げ口をされないよう彼女の舌を切り取る。帰国し、妹は「航行中船から落ちて死んだ、すまない」と泣きながら王女に謝る王。一度は王の言葉を信じる王女だが、王への不信感はつのるばかり。そんな時、隠密2人が妹の使いだと持ってきた一枚の布切れには、赤糸で真実が刺繍されていた…かくして王女の復讐劇が始まる。
王の名はテレウス、王女はプロクネ、そして王女の妹はピロメラ…古代ローマ時代の詩人オウィディウスがラテン語で書いた15巻にもおよぶ長い詩『変身物語』のエピソードのひとつを作家フィリップ・ミンヤマが戯曲化した。演出は、コピやアルフレッド・アリアスの流れをくむ、アルゼンチン出身で今一番エキセントリックな演出家のひとり、マルシャル・ディ・フォンゾ・ボー。またこの舞台は、コメディ・フランセーズの役者が同劇場の「外」に出て、創設から今日まで前衛劇を多く提供してきたパリ近郊のジュヌヴィリエ劇場で演じるという新しい試みでもある。さて光と影を巧みに使ったディ・フォンゾ・ボーの舞台で、王女と妹役を演ずるのはベテラン女優カトリーヌ・イエジェル。王女の妹は12歳という設定なのではじめは少し違和感があったけれど、ディ・フォンゾ・ボーはこのズレをうまく利用し、ストーリーに一種の奇怪さを与えることに成功している。王への復讐を果たした王女と妹は、ツバメとヒバリに「変身」して王の報復を逃れる。めでたしめでたし。(海)
Théâtre 2 Gennevilliers :
41 av. des Grésillons 92230 Gennevilliers
01.4132.2626 M。Gabriel-Péri
6月15日迄。火木19h30、水金土20h30、日15h。8e-22e。