セルバンテスが『ドン・キホーテ』を発表した1世紀後、ブラジルからポルトガルにやってきた作家アントニオ・ホセ・ダ・シルヴァが書いた戯曲『偉大なるドン・キホーテと太ったサンチョ・パンサの人生』では、膨大なセルバンテスの小説に、ダ・シルヴァなりのユーモアとパロディを織り込んだ楽しい作品だ。この作品がコメディ・フランセーズの役者とマリオネットによって演じられている。
私の記憶だけでも、コメディ・フランセーズの舞台にはこれまでに何度か「わーっ!」と息をのんだ。例えば1998年の『ザ・テンペスト』の舞台脇の天井まで幾層にもなってぎっしり詰まった本の山、そして数年前の『ラ・フォンテーヌの寓話』での奇想天外な衣装と照明…。今回の舞台も、美術、照明、衣装はもちろん、マリオネットまでこの戯曲のために制作された。マリオネットを器用に動かしながら衣装を着て実際の登場人物役を演じ、さらにはアカペラで独唱、合唱をする10人の役者たちの準備も、刺激的とはいえ大変だったろう。国立劇場としてひとつの舞台にかけることのできる準備期間と予算が、こうした「新しい試み」への余裕につながるのか? 個人経営の劇場からすれば本当にうらやましい話だ。
かくしてドン・キホーテとサンチョ・パンサの流浪と冒険は、現代人をなおも魅了する。サンチョを憧れのドゥルシネーアと間違うドン・キホーテ、念願の島を手に入れるサンチョ…、二人が見る、そして見せてくれる「夢」と「幻影」に私たちは喜怒哀楽、そして憧れと共感をおぼえる。演出は人形劇作家のエミリー・ヴァランタン(海)
Comédie française-Salle Richelieu :
2 rue du Richelieu 1er 08.2510.1680
7月20日まで14h30または20h30。(演目は日替わりなのでwww.comedie-francaise.frを参照)。5€-37€。