テレビ会社による映画製作への出資が義務づけられた80年代以降、政略結婚をさせられたテレビ界と映画界はにわかに急接近。映画界にはテレビ畑出身のコミックスターが流れ込んでいった。ジャン・デュジャルダンもその一人。大人しくしてればモデル並のルックスだが、笑うと思いっきり下がる眉毛がご愛嬌だ。
彼の出世作『Brice de Nice』では地中海で大波を待つ金髪のサーファーくずれ、『OSS117, Le Caire nid d’espions』ではフランス版のおとぼけジェームス・ボンドに扮し、鮮烈なキャラクターを構築することに成功した。映画は大ヒットを記録し、今やフランスで最も稼ぐ俳優に昇進した。彼のやや「成り上がり」的なイメージは、『99francs』や、現在公開されている『Cash』など、お金に関するテーマの映画を、自然に呼び寄せているところがあるかもしれない。器用なので『ブルーレクイエム』や『Contre-enquête』など、シリアスな演技もお手のもの。だがやはり彼の基本はコメディだ。「俳優と認められるためには、深刻な役を演じないといけない。でもシリアスな役はコメディよりもずっと簡単さ」。こう語る彼の笑いの源は「人間観察」にあるという。「兵役時代、回りの人を観察することほど、笑ってしまうことはなかったんだよ」。(瑞)