出会いは、ヴァレリーさんが3歳でアランさんが10歳の時。パリ郊外アントニー市の隣人同士だった。二人が急接近したのは、それから15年後のヒッピー旋風が吹き荒れるころ。ヴァレリーさんは、ボーイスカウトの団長で演劇サークルを主催するアランさんに憧れ、初恋が実った。27年前に結婚し、現在、25歳、22歳、18歳の娘がいる。「結婚は家族をつくること」と口を揃える二人。「もう一人欲しかった」ヴァレリーさんに対して、「子供が4人になると、車だってワゴンに替えなきゃならないしね」と言うのは、ルノー社の内装デザイナー、アランさん。家族の形が多様化するフランスでは、少数派になりつつある古典的なカップルだ。3人の子持ちで犠牲にしたことは? との質問には「地中海クラブのバカンス! 海外旅行は無理だったが、自然体験に心がけた」。娘たちとは、問題がある場合とことん話して解決、やむをえず平手打ちしたことは、過去に5回。
「今までは、娘と親類の世話がメインの生活だったが、最近何かが変わった」。きっかけは、昨年までの3年間のバルセロナ駐在生活。親も友人も同じ町に暮らす大家族出身で、町を離れたことがなかった二人にとって、「介護や親族関係のしがらみから少し距離をおけた期間だった。1年の2/3は泊り客がいたけれどね」。地下鉄にも一人で乗ったことのなかった専業主婦ヴァレリーさんが、バルセロナでは単独行動をとるようになった。「大人になった娘たちと過ごした、最後にして最良の日々…」と振りかえる。今でもバルセロナに残る長女、トゥールーズで同棲をはじめた次女、最近、教育学を選んで巣立っていった末娘。
実はここにきて、出会って以来、初めてギクシャクした空気を味わっているという。「娘のいない夜は寂しいわ。お互い別々にテレビを見ているの。これから夫婦の時間をどう過ごしていくかが、一番の課題ね」(咲)
アリアーヌ・ムヌーシュキンの『モリエール』は二人ではじめて見た映画。上映時間4時間10分はキスに没頭。最後までしっかり見るのが目下の夢。
これから相手に期待したいことは?
「一日も早く一緒に孫の面倒をみたい」(ヴァレリー)
「このまま何も変わってほしくないんだ」(アラン)
前回のバカンスは?
(声をそろえて)「バルセロナでの3年間の駐在生活」
夢のバカンスは?
「ヨルダンの幻の都ペトラに行きたい」(ア)
「マルティニークの海岸で、のんびりしたい」(ヴァ)
最近二人で見た映画は?
“Il y a longtemps que je t’aime” にグッときたわ」(ヴァ)
最近二人で出かけたイベントは?
「家系をさかのぼって祖先を知るgénéalogieの講座に二人で通い始めたばかりだよ」(ア)
カップルとしての満足度を5つ星でいうと?
★★★★1/2(ともに)