平和って何だろう? 日々の闘いがあるからこそ人は平和を賞賛し、そして平和な日々の中にも闘いは存在する。そう、つまり平和と日々の闘いは背中合わせ、常に同居している…。
不条理ともいえるブラックユーモアで知られた作家ローラン・トポール (1938-97)と、作家で演出家、そして映画監督でもあるジャン=ミシェル・リーヴが二人で書いた戯曲がこの『Batailles』である。漂流する帆船に乗り合わせる二人の男、愛想がつきて別れようとしている恋人がバルコニーで自殺未遂を計りさらに愛想をつかす女、登山中に事故で命を落とす男とあの世のカフェで和む奇妙な男との会話、恋人に耐えられず殺人を犯す女の独白、妻を寝取られた男と寝取った男が10年後の再会で妻を押し付け合うやりとり、といういずれも「うーん…」とうなってしまうような極端な状況設定の中で、先に挙げた日常の平和と闘いが繰り広げられていく。
1983年初演時の演出に参加した映画監督トニー・マーシャルが初舞台で大健闘。そして彼女を支えるベテラン役者、ピエール・アルディティとフランソワ・ベルレオンも素晴らしい。
トポールとリーヴの「馬鹿馬鹿しいからこそ現実的な」世界に浸りながら、日常のどんな出来事でもこうして笑い飛ばせればさぞかし楽だろう…とふと思う。そもそも生きるということはこうした日常の困難や煩雑さの中に少しでも多くの笑いを見いだすことにあるのではないだろうか? トポール没後10周年はあまりにもわざとらしいので11周年にこの戯曲を再び演出した、というリーヴの粋さにも感激。(海)
Théâre du Rond-Point : 2bis av. Franklin
D.Roosevelt 8e 01.4495.9821/08.9270.1603
24日迄。火-土21h、日マチネ15h。 10€-33€。