「こんなコントラストに富んだ地区は他にないわ!」というシャルロットさん。地下鉄のシャトー・ルージュのすぐそば、ドゥジャン通りといえば、パリでひときわ異彩を放つエキゾチックな商店街として有名。この辺り一帯に広がるアフリカ街の顔として、パリ中のアフリカ人はもとより、様々な人々を惹きつけている。この短い通りに3軒もある魚屋では見たこともない珍しい魚が、きりっと垂直に並べられ、八百屋ではまだ青々としたバナナや、タピオカの原料になるキャッサバ芋などが山積みにされている。パリの多国籍文化を象徴するような、この地区に住んで数年経つが、「サクレクール寺院を中心に18区を離れたことがないの」という。 10年前に、シャンパンの里、ランスから写真を勉強をするために上京した。「パリは、ここにいると何でもできるんだという、夢を抱かせてくれるような街よ」。今は、雑誌の制作にかかわりながら、「今の時代を切りとる」写真家になることを夢見ている。 このまるで国境なしという風情の18区は、年中観光客でごった返すサクレクール寺院、流行のカフェやクリエーターのブティックが並ぶアベス地区、寺院の裏手に広がるシックな街並みのラマルク地区、マグレブからの移民が多く暮らすグッド・ドール地区、その北のアフリカ街など変化に富む。しかし、18区も都市開発で、建物は修復され歩道は整備されて緑がふえた。パリらしさが失われるばかりで、6年前、バルベス大通りには、大型チェーンのヴァージンメガストアが誕生した。「街がどんどん商業化の波に乗って、個性を失っていくのは絶対イヤ!」と叫ぶ。また「地価が高騰しパリは住みにくくなったけど、まだ18区にはパリのよさが残っているわ」 そんなシャルロットさんには、ミュージシャンを目指す恋人のフレデリックさんとの間に、3月に女の子が生まれる。この生命力にあふれる界隈で、またひとつのエネルギーが誕生するのだ。これから春に向けて、いい季節がはじまる。「この界隈は夏がイチバン! そこら中でフェットやコンサートが催され、お祭り気分で盛り上がるわ」。そして「定年までは、この地区に居続けたい」という。18区のもつ陰影に富んだ情景と、そのダイナミズムに魅せられた一人だ。(咲) |
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●Atelier 2000 「ルイーズ(お腹の赤ちゃん)への玩具はここで」とシャルロットさんが通う店。すっきりとした趣味のいい店内には、奥の工房で作られたばかりの、木製のおもちゃやオブジェが展示されている。ここは、社会的に困難な状況にある人々を、ホームレスになる直前に援助しようという考えのもとに作られたアソシエーションが運営する。手作りのぬくもりを感じさせる、大人も十分楽しめる空間だ。 |
18 rue Labat 18e 01.4258.0126 M? Marcadet-Poissonniers 火~金13h-19h、土 11h-19h。日月休。 |