ルクセンブルグに本拠をもつクリアストリーム銀行は、都市銀行やスター、政財界人他、テログループの資金口座まで有し、「不正資金浄化銀行」として、ジャーナリスト作家ドゥニ・ロベールが同行の不透明な部分を暴露する著書を2冊発行している。 04年3月、仏国防省付属の対外治安総局DGSE勤務のコンピュータ技師ラウド氏が作家から同行の895の口座リストを受け取る。 同年4月、91年台湾へのフリゲート艦疑惑(9億ユーロの手数料収賄容疑者の口座も同行に)を調査中のヴァン=ルウィンベック予審判事に、欧州航空防衛産業大手EADS社のジェルゴラン副会長(DGSE国際諜報員でもありドビルパン首相とは長い交友関係に)が密会し「命を狙われている」ともらす。その後、同予審判事は数通の匿名の手紙と上記リストのCD-Romを受け取る。それには同業界のライバルの企業家からファビウスら左派政治家、サルコジ内相の名前までのっていた。しかし口座リストは操作・変造されていたと判明。 同疑惑に関しサルコジ現内相は、UMP総裁選と大統領選への進路を阻むための「策謀!」と暗に政敵、現首相に矢を向ける。06年1月31日、内相は「中傷の被害者」として損害賠償訴訟の原告に。ドビルパン首相は、逆に彼を吊るし上げるための何者かの陰謀と、「虚言 ! 中傷 ! リンチ !」と議会で叫ぶ。 が、06年3月28日、疑惑のカギをにぎる重要参考人ロンド将軍の証言とメモによると、04年1月9日、ドビルパン外相(当時)が将軍にジェルゴラン氏を紹介し、後者が将軍に問題の口座リストを渡す。外相はシラク大統領の指令でと、将軍に口座疑惑の調査を依頼。ここでサルコジの名が出ていたかどうかでドビルパンとサルコジが正面衝突。実直なロンド将軍の証言と克明なメモは次々にドビルパン首相の言明を覆し、首相は窮地に。 一方アリオ=マリ国防相は何も知らされずロンド将軍が管轄外の大統領、首相のために暗躍したことで怒りを爆発。と同時に変造口座リストに彼女の連れ合い、オイエ議員の名も出ており彼女は被害者として提訴。ファビウス他も被害者として我勝ちに訴える。ヴァン=ルウィンベック予審判事も、何者かの策謀に「操られた被害者」と言明。怪文書の匿名差出人と疑われてきたジェルゴラン氏が、5月18日、パリジャン紙に自分が差出人だったと認める。誰が誰のために何のために誰を中傷し陥れようとしたのか…シラク・ドビルパン体制が政財界疑惑ミステリーに巻き込まれる。そして疑惑のパズルはシラク大統領の日本の隠し口座(?)にまで飛び火…。(君) |