仏記者人質とスカーフのからみ合い。

 8月20日、仏人記者2人とシリア人運転手がイラクのナジャフ付近でイスラム武装集団に拉致された。犯行グループは人質の解放条件として、9月2日からフランスで施行される公立校での「スカーフ禁止法」の48時間以内の撤廃を要求。シラク大統領から全政界、原理主義サラフィスト派も含むイスラム団体指導者、信徒、非イスラム市民までが結集し、武装集団の的外れの脅しに対し人質解放を叫び、各地で抗議集会。その中にはスカーフを深々と被った女性たちも目立ち「わたしたちのスカーフが人質にされた」と仏イスラム社会の怒りの声も。
 フランスは欧州最大のイスラム社会(約500万人)を抱えているが、仏人記者人質事件でイスラム教徒が仏市民として、スカーフが武装集団に利用されたことに激しく抗議したことは、仏政府も予期してなかったよう。この事件で初めて宗教・党派を超えての結束が実現したことは、イスラムの仏社会同化の実が結んだともいえる。
 シェノ(38)、マルブルノ(41)両記者はフリーのジャーナリストで、前者はRFIやFrance Info放送、後者はフィガロ紙やRTL放送他で報道、イラクに関する共著も出版。
 4月以来、イラクでの報道人の拉致は、邦人、英米記者と続出。8月26日にはイタリア人バルドニ記者が同グループに殺害された。武装集団は同記者の解放条件にイタリア兵のイラク撤退を要求したが、イ政府が拒否。が、イラク戦争に反対してきたフランスの国内法「公立校での目立つ宗教的しるし禁止法」の撤廃が仏記者2人の解放条件とは! 仏政府にとっても青天のへきれき。とはいえシラク大統領が「非宗教主義の飛躍」とまで謳った同新法を、テロ組織アルカイダを始め原理主義派は、「スカーフの禁止=イスラムの侵害」と短絡視し仏政府に警告してきたことから、フランスもテロの標的に入っていたことは確かだ。
 バルニエ仏外相他、仏イスラム評議会代表も中東の宗教指導者のもとに駆けつけ、人質解放への介入を願い出たが、9月4日から、暫定政府・米軍のスンニ派ゲリラ掃討作戦が続く中、武装集団との接触も困難に。人質問題ではたして宗教指導者らの親仏感情に頼れるのか、混迷状態が続く。
 一方、新学期の登校時にスカーフを外した女生徒が大部分で、全国で約70人がスカーフに固執しているという。彼女らは退学か私立への転校か選択を迫られるはず。彼女らが今ほどスカーフの宗教的政治的重みを感じたことはなかったのでは。(君)