フランス、パリのタクシー事情。

 フランスのタクシー業者はおカミの言うことにハイそうですかと従う羊の群れではない。「経済成長促進委員会」アタリ委員長(ミッテラン大統領元顧問)は、 都市圏のタクシー不足解消対策案報告書で、07年末までに届け出たタクシー業申請者に無料で認可を与えることを提案した。が、これはライセンス譲渡金の返済に汲々としている大半のタクシー業者にはまるで現実を無視したテクノクラートの案なのだ。この対策案に激怒したタクシー業者たちが1月30日と2月6日、大都市で大規模な徐行運転デモを決行し、各地で交通がマヒ状態に。政府はことの重大さに慌ててか6日、同案を撤回しタクシー業者らの抗議に屈した。
 現在全国に5万2000台、パリだけで1万5900台が走っている。60年代の映画にもよくパリの流しのタクシーに主人公が粋に指をならして「タクシー !」と呼ぶ場面が出てくるが、1930年にはパリだけで2万5000台走っていた。それが1937年法でパリのタクシー台数が1万4000台に制限された。警視庁は年間100~300件の申請者に無料で認可を与えているが、6000人が認可待ちにあり最低16年待つというから、HLM公団住宅並の競争率だ。
 1995年法により認可証の業者間での譲渡が可能になり、年間500~600件が15万~20万ユーロ(ニースは40万ユーロ!)で譲渡されている。タクシー業者の85%は自営で1日11時間運転し、月収1200~1500ユーロ。譲渡金を返済しつづけ定年時に転売し、老後に備える運転手が多い。また病人や通学児童の送迎タクシー業者は社会保険(60%)や自治体、保険会社が料金を返済するが、週75時間働き収入は2000ユーロ前後。タクシー会社に雇われている運転手は1日10時間運転し、給与は収益の32%程度だという。
 パリのタクシー不足と交通渋滞は有名だが、例えばニューヨークにはイエローキャブを含め4万台(1km2に51台)、ロンドンはブラックキャブ4万3000台(1km2に27台)が走っているが、パリは1万6000台(1km2に21台)で、断然パリはタクシーを拾いにくい。彼らの1日の走行時間の45%は渋滞に費やされるというから、タクシー業者は1、2時間待っていてもロワシーやオルリー空港で待機していたほうがいいわけだ。
 タクシー業は失業者や移民層にも開かれた職業なのに、営業権と同様にライセンスの譲渡・売買制度が改善されない限り、タクシー市場の閉塞状態は存続しそうだ。(君)