「金欠症の客が多い」〜馬券カフェ経営者のつぶやき〜
じっくり準備するならレース前日に競馬新聞を入手したい。馬の得意なレースの距離・タイプ、年齢、体重、過去の成績、騎手、オーナー等の情報を分析。馬が長いバカンスを取った直後でないか、レース直前にも競馬場からの中継に目を配り、下痢していないか、などをチェック。5連勝、4連勝、3連勝、など賭け方は多々あるが、賞金が大きいのは5連勝式、5等までの馬を当てる。当日(美)はハンサムな競馬歴20年のベテランのアドバイスを鵜呑みにし、見事全敗。quidの本によれば15頭のレースで、1〜3位までを順番通りに当てられる確率は2730分の1・・・。
町の至るところで見かけるPMUの看板。PARI MUTUEL URBAINの頭文字をとった、場外馬券売場制度のことで1930年に始まった。今日はドーヴィルとシャトーブリアン、明日はプロヴァンスでナイター・・・とレースは毎日。競馬場に行かずに、毎日、12から賭けられる手軽なPMUは、過去3年連続で売上げは右上がり。今や全国に8000軒を数える超人気プレイスポット。
17区のPMUカフェ。馬券を買う人、レースを掛け声とともにテレビ観戦する客で白熱の店内。レジに立つマルコ氏の眼前には、レース開始直前まで券を買おうと、現金を差し出す必死の手、手、手。一つレースが終われば支払いと次のレースの馬券売買、ひっきりなしの銭勘定を恐い顔で黙々と続けるマルコ氏。カフェ経営歴32年になる。
ー大変な作業ですね。それでもPMUカフェをやるのは見返りが大きいから?
マ:「見返り?この店で掛け金として集まる金額の1.6%だよ、たったの。お上が管理する商売は利益が薄いよ。それでもタバコ(6%)や、宝くじの類(5%)よりはいい。競馬は人数が断然多いから」
ー競馬だけして飲み物を注文しない客も多いようですが?
マ:「ここで賭けをする人は無職の人が多い。仕事してないと収入が少なく賭ける金も少ない。賭けることは、お金を捨てること、勝つ人なんてほんの一握りだから。てな訳で客は慢性の金欠症が多い。レース時は店は満員でも、皆飲み物を注文する訳じゃない、でも「飲め」とも言えないでしょ。オーダーを義務付ける店もあるけど。儲かった人はオーダーし、スッた人は結局何も飲まなかったり」
レ:「昔はもっと派手に遊んだもんよ」と相棒のレミ氏(75歳)が傍らで自らの過去を振り返る。
レ:「賭事で勝ってる時は絶世の美女たちに囲まれ、仲間とレストランを鳴らして歩き回ってたもんよ。でもそんな付き合いは、運の尽きが縁の尽き」。カード遊びから足を洗いカフェ経営の道に。
レ:「今どき大金を賭ける連中はインターネットだよ。ここに来る客なんて、小銭しか持っちょらんビンボー人だわ」
ーわ、我らきゃ、きゃくに対してビンボー人とは、失礼じゃないっすか!
レ:「仕方ない、事実だもの。そう書きなさい」枯葉のように床に溜まった馬券の紙屑を、往年の遊び人、レミ氏が掃いて集める。「もう帰りなさい!今日はもう十分飲んだだろうが!」と酔っぱらいを諭すマルコ氏の恐い声(と顔)。目まぐるしく働く二人に質問する機会を待つうちに、夜は更けていた。今日はそろそろ閉店です。(美)
P M U
馬券カフェ
(PMU)チルラさん
●今日はどうでした?
24e賭け、400e勝ち!
●いつから?
7年前から。
●頻度は?
毎日。
●一日の予算は?
40〜50e+カフェ3杯。
●儲かりますか?
日によって。7年間全体では、負け。
今までに2万フラン(3000e強)の大金を獲得したことが3回。
●新聞の予測は当たりますか?
新聞には頼らず、馬券カフェの経営者の予測を頼りに。好きな騎手が参加する時は大きく勝負に出る。
●モットーは?
「虎穴に入らずんば虎児を得ず」