●Matrix reloaded ストーリーは全然重要ではない。現在の世界がマトリックスという仮想現実で、現実世界は人工知能が人間を支配する世界。ネオ(キアヌ・リーヴス)は人間解放の救世主として、隠れ場所ザイオンを死守するためマトリックスに侵入し、エージェントたちと死闘を繰り広げる、そこにラヴ・ストーリーがからまって…こんな話、日本のコミケに行けば一山いくらで転がっているだろう。実際ジャパニメーションの影響を監督も認めている。しかし、こんなによくできたカルト・ムービーはない。前作にあった、戦闘シーンが影絵のように交差する押井守的世界は鳴りをひそめ、明るい空の下でCGを駆使したカンフーアクションやカーチェイス、死闘がくり広げられる。カメラスピードは普通だけど動きはスローモーション、360度回転のカメラアイなど斬新な映像がステキ☆(百) |
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●Swimming Pool フランソワ・オゾンの新作は、『まぼろし』でオゾン作品に主演したC・ランプリングと『焼け石に水』、『8人の女』で主演したL・サニエの一騎打ち。探偵小説を書く売れっ子の英国女流作家が、プロヴァンスの光の中で出会った自由奔放な娘のおかげで、自分を解放していく。「マープル夫人」と娘にからかわれながら、作家は探偵のように娘の身辺捜査を始め、挙句の果てには殺人事件の片棒までかついでしまう。ミステリーやサスペンスに惹かれるのは相変わらずでも、オゾンはカメレオンのごとく撮る作風を変える。この作品では、馴染みの女優との仕事だからか演出に余裕すらうかがえる。一般の評価は「おとなしすぎる」といまひとつのようだけれど、オゾン-ランプリング-サニエの楽しそうな共犯ぶりが見れたので、私個人的にはまあ、満足です。(海) |
Swimming Poolのリュディヴィンヌ・サニエ |
●Dogville 待ちに待ったラース・フォン・トリアーの新作。ニコール・キッドマンが自ら望んで主演、と話題になった。まず美術の奇抜さに驚かされる。スタジオの中に作り上げたアメリカの架空の町がDogvilleで、ここへ追っ手を逃れた美しい娘グレースがたどり着く。村の生活の喜びもつかの間、やがて恐怖のために心まで醜くなった村人たちは、グレース=キッドマンをシンデレラのごとく虐げ、皆の犠牲になることを強要する。 無駄のないストイックな美術が、キッドマンや村人たちの生々しい心情を浮き彫りにする効果を上げる。暴力や残酷さの配分はもちろん大きいけれど、ところどころ感動的で詩的でさえある。弱者よ滅びよ、力のある者が結局勝利者なのだ、というモラルが、哀れな天使グレースを一瞬のうちに悪魔に変貌させるラストシーンは凄みがある。この作品はフォン・トリアーが構想する三部作の第一部、キッドマンは最後まで主演するというから、ますます楽しみだ。(海) |
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