奇妙な女たち。 Constantin GUYS《Fleurs du Mal》

 コンスタンタン・ギース(1802-92)の生誕200年を記念して、デッサンや水彩画およそ130点の代表作がロマンチック美術館に展示されている。
 1863年、ボードレールはギースについて「現代社会の画家」と評する記事をフィガロ誌に寄せ、絶賛した。この評は、現在もギースを理解しようとする者にとって、変わらぬ意味を持ち続けている。
 上流社会を、民衆の中を、疲れることなく徘徊し、決して作品にサインをせず、孤独と匿名を望んでいたギースは、第二帝政時代のパリの社会を上層階級から底辺のまで飽くことなく観察した。中でも彼がその才能を余すところなく発揮したテーマは「女性」。彼の描く、芸術的文学的現代性の象徴である女性像からは、社交界、エレガンス、最新のファッションなど、当時の社会のさまざまな片鱗が見えてくる。そして同時に、そこには破廉恥で暗い売春婦のイメージが浮かび上がってくる。
 社会のどの階級に属していようと、ボードレールの言葉を借りるなら、女はギースの作品の中では「見世物」となる。ギースの女性観が生産するこれら「見世物の女」、「女性のイメージ」は、その作品を見る者の中で「イメージどおりの女性」に転換されてしまう。それは、男が男のために描いたまったくの幻想の世界なのである。
 この月並みな論法はばかばかしく思われるだろう。しかしギースの芸術が我々に見せてくれるのは、実際その通りなのだ。彼の絵にはエロチシズムや官能性、気取りがない。絵の中の女たちは、生きた創造物である女性たちと違って、硬直したポーズをとり、人工的で生気のない蝋人形のようだ。髪型、化粧、ドレスといった現代も変わらず存在する無個性な工業的類型を、ギースは化石化してしまったかのようだ。この無個性な化石は、奇妙でぞっとするほど無気味でもある。(マルク)


*Musee de la vie romantique:
16 rue Chaptal 9e(月祝休)
1月5日迄


トマス・シュッテ《デューラー》

 デュッセルドルフの芸術アカデミーでゲハルト・リヒターに学んだシュッテの新しい作品が、今パリで見られる。しとしと雨のなか、僕の視線は、遠くの景色や夢の光景を見るようにギャラリーのショーウィンドーに吸い込まれてしまった。
 展示は3部からなる。まず版画。ここではシュッテがいかに素材に心と力を注 ぎ込んでいるかに驚かされる。彼の版画は流れるような線の活力。彼の版画はスケッチそのものだ。目配せや隠れた思い、瞬時の記憶やらが鮮やかな享楽的な色で表現されている。時に言葉が現れるのは、美しさが見る者の心地よい枕となるのを阻止するかのようだ。作品の本義を探るのはやめ、直感的で水の滴のように軽やかな版画を読むことを愉しもう。
 第2部はセラミックの彫刻。目の高さの台座から、四つの巨大な頭がこちらに挑む。捕らえどころのない、何か考えているような、驚くような、からかうような表情。仏像のような存在感。虚の超越。不条理の神々しさ、不吉で愚直で偏狭な現実。こんな美しい展示はまれだ。
 最後は、金属製の女性の大トルソ。それは、天の力のように僕の視線に迫り来る。鋼鉄の赤茶色の風合いは不思議なほどに肌に似て、存在しない頭や手足に命を与える。銅の緑の輝きには、爬虫類のような女の危うさがある。服従的であると同時に、飛びつく準備ができているような…。11月8日まで。(Ernst Kapatz)

*Galerie Nelson :
40 rue Quincampoix 4e 01.4271.7546


●Louise BOURGEOIS(1911-)
ルイーズ・ブルジョワの表現活動の源泉ともいえる少女時代の思い出。91歳にしてなお実験的に独自の世界を作り上げている。11/24迄
Palais de Tokyo:
13 av.du President-Wilson 16e(月休)
●<L’Art du dessin, de Bruegel a Rembrandt>

ボストン・アブラムス・コレクションが所蔵するネーデルラント(ベルギーとオランダ)の画家のデッサン。ブリューゲル、レンブラントなど。12/8 迄(月休)
Institut Neerlandais: 121 rue de Lille 7e
●<Icones>
6世紀にビザンチンで発達したイコン(聖人画)は西洋美術に大きな影響を与えた。ルーヴル美術館のコレクションから。11/7~12/17迄 ルーヴル美術館(火休)
●<Manet/Velazquez, La maniere espagnole au XIXe siecle>
17世紀のヴェラスケスやムリーリョ、スルバラン、18-19世紀のゴヤなど、スペインの画家が19世紀半ばのフランスの画家に与えた影響をマネ、ドラクロワ、クールベ、ドガなどの作品から考察する。
1/5迄 オルセー美術館(月休)
●Antoni TAPIES(1923-)
カタロニアの風土とその文化的政治的状況を喚起させる作品をつくり続けてきたタピエスの近作。11/7~1/5迄
Galerie Lelong: 13 rue de T刺屍an 8e
●Matthew BARNEY(1967-)
現実のさまざまなエレメントが並列し、混じり合い、溶け合う。アメリカ人、バーニーのフランス初の個展。5つのフィルム作品 “Cycle Cremaster”。1/5迄
パリ市現代美術館:
11 av.du President-Wilson 16e(月休)

●Amadeo MODIGLIANI(1884-1920)
アフリカ・オセアニアの彫刻とイタリア絵画の豊かさを同時に内包しているモディリアーニの作品。生涯に制作した全作品の4分の1にあたる約100点の絵画を展示。3/2迄

Musee du Luxembourg:

19 rue de Vaugirard 6e(無休)

●John CONSTABLE(1776-1837)

19世紀前半イギリスでターナーと同時期に風景画の黄金期を築いたコンスタブルは、自然を率直に観察して表現することで19世紀の風景画の方向を定めた。それは後に印象派の世界観を導くことに。数多くの作品の中から画家リュシアン・フロイトが選んだ約200点の水彩画とデッサンを展示。1/15迄

グラン・パレ(火休)


 

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