オーラに包まれて Mark Rothko展

 ぼんやりと浮かび上がる大きな長方形。その前で、いつの間にか私は思い出をたどっている。人生は風のようにはかない。誰もみなひとりぼっちだ。
 1903年にユダヤ人としてロシアに生まれ、10歳の時にアメリカへ移住。”ニューヨーク派”としてゴットリブ、ラインハートらとともにその抽象表現主義といわれる表現方法で、アメリカ現代美術史上重要な位置を占めるマーク・ロスコ。人物、風景を描いていたひとりの画家が、絵画を絵画以上のものにしていく過程に、観客もまた、時とともに変化していく自分を重ねずにはいられない。
 転換期は戦争と前後して訪れる。40年代初め、それまで外側から捉えられていた主題が内側から変形させられる時期があり、そして戦後、47-48年に制作された”multiforms”シリーズから突如としてフォルムは溶けだしてしまう。見ている私たちにとっては一種のショックである。が、画布の表面を滑っていた目はじきに奥へと入り込んでいき、それまでと違う次元のものが見え始める。重なりあう色の長方形。”Violet, Black, Orange, Yellow on White and Red”…。刷毛のあとを残し、もやのかかったような矩型の中に私自身が混ざりあう。そこには”生きた”、そして”死すべき”人間のすべてが見えるのだ。
 彼は、観客が近づき、包み込まれたように感じられるほど低い位置に作品が展示されるのを望んだという。それはその絵を描いた彼自身の位置だからだ。たがいが溶け合う「私的」な関係、それが彼とその大きな絵との関係でもあった。
 希望と同じだけ絶望があり、そのどれもが「生」である。彼が好んで読んでいたシェイクスピアやニーチェのように、ロスコは画面に「生」全体を流し込もうとした。しんと静まりかえった長方形。軽やかだった色彩は、時とともに暗く濁っていき、彼の晩年の作品、セント・トーマス大学の礼拝堂に残した絵は、黒。
 晩年は病に苦しみ、1970年に自殺。彼にとって死は「逃避」ではなく「意思」だったのだろう、最後の部屋でそう思った。

(仙)

*Musee d’Art Moderne : 11 av. du Pdt – Wilson 16e 4/18迄 月休


“Musee des annees 30”


 12月、ブローニュ・ビアンクール市役所の隣に図書館、映画館及び「30年代美術館」が開館した。30年代といえば、ピカソ、マチス、ミロ、エルンスト、レジェ…などが名作を世に出した時代だが、彼らの作品は一点もなく、展示されているのは、シュルレアリスムや抽象主義に背をむけ主に新古典主義を堅持した作家たちの彫刻、絵画、デッサン、水彩画等だ。
 今世紀初頭に立体派を重点的に扱った画商カーンワイラーがブローニュに居を構えたことから、町内にアトリエのあった立体派のJuan Grisを初め、マルロー、サティ、ル・コルビュジエと、多分野のアーティストが画商のサロンに集い、”ブローニュの日曜日”の会を催したこともこの美術館設立の背景ともなっている。
 彫刻部門ではLandowski(1875-1961)やアカデミックなローマ賞受賞作家の新ギリシア派作品が並ぶ。絵画部門には二つの世界大戦の間の平安なブルジョワたちの日々をピクニックや田園風景で表わした具象画家たち。意外だったのは、絵本画家として知られるBoutet de Monvel (1884-1949)の肖像画(写真)が示す社交界画家としての一面だ。その他、旧植民地原住民をテーマにした植民地美術。最後にMaurice Denis(1870-1943)を中心とした宗教画家へと続く。30年代のフランス上流社会でもてはやされた新古典主義の美術館というべきか。(君)
26 av A.Morizet, Boulogne-Billancourt M: Marcel Sembat (月休) 01.5518.5570


●レンブラントとアムステルダム
レンブラントが散歩した道を追って彼のデッサン・版画50点他。同時展「アムスは女」では写真家7人の作品。2/14迄(月休)
Institut Neerlandais :121 rue de Lille 7e
●グループ・ユートピア展
1968年に都市のエアドーム化を構想した建築家グループ「ユートピア」から70年代ポップアートまで、タイヤに発想を得た作品。2/20迄(12h30-19h 日月休)
仏建築学院 : 6bis rue de Tournon 6e
● Andre HEURTAUX (1898 – 1983)
1922年以降キュビスムから純粋主義を経て幾何学的抽象へ。1937年モンドリアンに出会う。黒・灰色の対角面の幾何学的作品で知られる。2/20迄
Galerie Denise Rene : 22 rue Charlot 3e
● Bernard PAGES<新作彫刻>
1940年生まれ。鮮色をほどこしたセメントの量塊と鋼のアクロバット。2/28迄
Galerie Lelong : 13 rue de Teheran 8e
● Alexandra GULEA<街の中の犬>
ルーマニア人。ブカレストの犬たちを描いたデッサン・絵画。2/26迄(土日休)
Le Pont Neuf : 31 rue du Pont-Neuf 1er
●写真展<アンコールの神々 – BAYON>
クメール王朝アンコールの遺跡バイヨン
寺院の尊顔彫刻を、BAKU 斎藤が5年かけて撮影した85点。大型パネル。2/8~26迄 
ユネスコ : 7 Place de Fontenoy 7e (土日休)
● 50年代デザイナー展
EAMES, MOLLINO, NELSON, NOGUCHI,
NAKASHIMA,PERRIAND,PROUVEら7人の作品。2/27迄  Galerie F. Laffanour-
Down Town : 33 rue de Seine 6e
● Robert COURTRIGHT (1926 -)
米作家。ブロンズと張子によるマスク。コラージュの抽象作品も。2/27迄
Galerie Dutko : 13 rue Bonaparte 6e
●カシミアのショール展 <1810~1880>
19世紀上流社会で既婚女性のコートとして珍重されたチベット産、仏産のカシミアのショールはゴブラン織りタピスリーにも匹敵する。2/28迄 Palais Galliera : 10 av Pierre-1er-de-Serbie 16e (月休)
● 6人展<樹>
HOMMES, LEICK, SANSO, MATSUTANI, MAGNIN, SOULIEの作品。3/6迄
Galerie A.Aricchi :26 r. Keller 11e (14h30-)
● Slimane Ould MOHAND (1966 – )

1990年仏に亡命したアルジェリア人画家。裂烈する祖国の記憶に、傷ついた空間と住民への新たな記憶が重なる。3/10迄

Galerie B.Aittouares : 29 rue du Seine 6e
● Oscar KOKOSCHKA (1886 -1980)
1906年以降ウィーンの表現主義画家・戯曲作家として活躍した。初期(1906-31)の硬い描線による少女、裸婦のデッサンの他、風景画等約100点。3/7迄(月休)
Musee de la Seita : 12 rue Surcouf 7e
● Jane Evelyn ATWOOD<写真 : 女囚>
拘置所内で生きる女囚たち。3/14迄
Maison de la Villette(ヴィレット公園内)
● O.V.N.I.<新しい世代の視覚表現>
1965~75年生まれの5人の作家による絵画・写真・デザイン・映画・コラージュ他。3/14迄 AREA :10 rue de Picardie 3e