素材が語る布。 Anni Albers展

 アニー・アルバースは、存命なら今年でちょうど100歳。彼女は、1922年にバウハウスに入り、バウハウスが閉鎖される1933年まで制作を続け、その後、夫で画家のヨーゼフ・アルバースと米国に移住する。バウハウスのテキスタイル・アトリエの生徒の中ではおそらく一番の才能の持ち主であり、テキスタイル・デザインのパイオニアの一人であった。
 今度の展覧会では、彼女のバウハウス時代の作品は展示作品約100点中20数点に限られているが、バウハウス時代初期の作品を見るだけでも、この展覧会に出かける価値がある。そのタピストリーや壁布は、抽象的なデザインと素材の様々な組み合わせ (コットン/絹、絹/ウール) から生まれているが、それは芸術と職人の技術を総合しようとしたバウハウスの革新的なプログラムにそっている。色彩、素材、技術の間に一貫した調和があり、イッテンやクレー、カンディンスキーらの、フォルムや色彩についての教えが生きている。
 その後バウハウスはデッサウに移るが、そこで彼女が制作した布は、実用性と工場での生産を目指したものへとはっきりと変化している。そこでは、刺繍されたりプリントされたりした具象的な図柄やモチーフに頼っていた、布の装飾的な役割が排除され、もっぱら生地や糸といった素材の本質、布が潜在的に所有している構造が開拓されている。我々が図柄とかモチーフと呼んでいたものは、糸の絡み合い方によってのみしか現れ出ない、ということがアルバースの作品によってわかってくる。コットン/シュニール/セロハン、あるいはジュート/ 金糸といった繊維がより合わされてできた、細かったり太かったりする糸によって作り上げられた素材あるのみである。素材はすでにひとつのフォルムであり、シュヴィッタースのコラージュやシュルレアリスムのフォト・モンタージュのごとく、表現はその素材間の出会いのみから流出すべきである、という考えがバウハウス教育の核になっていた。アルバース自身「私たちより、素材に語らせた方がいい」という。
 米国に渡ってからの彼女は、アンデスなど中南米の古い文明の布に魅せられ、強い影響を受ける。メキシコに何度も旅行して非西洋的な文化の源へ遡ろうとするが、これも彼女の20年代のモダニズムという冒険なしではあり得ないことだったに違いない。(マルク/訳 : 真)
*Musee des Arts Decoratifs : 111 rue de Rivoli 1er 1月30日迄 (月休)


骨は何を語るのか。
 オセアニアの島々では故人の遺骨を装飾する習慣がある。西洋人はそれを野蛮な風習と蔑んできた。遺骨崇拝は、実はヨーロッパのカトリック教地域でも聖者を祭るために中世から前世紀まで盛んに行われてきた。ここには祭・葬儀用に加工された人骨76点が展示されている。
 亡き先祖や権力者の力を現世に保存しようと趣向を凝らして装飾したオセアニアの頭蓋骨。鎧をまとったドイツの殉教者の全身の骨。聖者の骨を標本のように納めた豪奢な聖遺物箱。「生命から解放されることは真実の姿に帰ること、自己完成である。それを悟った人間は無感覚な土塊に帰ることを祭典と考えるようになるだろう」とニーチェはいう。しかし死を単なる腐敗と考えると、多くの人々は途方にくれてしまうだろう。生者は死者のエネルギーを借りようとしたり、死の世界へ対話を持ちかけたりして、生のあとにも死の世界が続くと信じたいのだ。
 骨屑を前に皆何を思うのだろう。物体化された死の前で生きた自分を確認しようとするのか。それとも不公平だらけの生の世界のなか、誰もが平等に持つ”死”を確認しにくるのか。(仙)
“La mort n’en saura rien”—reliques d’Europe et d’Oceanie 1/24日迄 (火休)
*Musee National des Arts d’Afrique
et d’Oceanie : 293 av. Daumesnil 12e

●Bill TRAYLOR (1854-1949)
米アラバマ州の農場に奴隷として生まれ、農場を離れたのち85歳で絵を描き始める。黒鉛や色鉛筆で描く語りかけてくるようなシンプルなデッサン。12/20迄
Galerie Karsten Greve:
5 rue Debelleyme 3e  
●Anselm KIEFFER (1945-)
近作 “Frauen der Antike” (いにしえの女たち) を展示。12/23迄
Galerie Yvon Lambert:
108 rue Vieille-du-Temple 3e
●Emmanuel LOWENTHAL (1896-1959)
ドイツ生まれ。写真家。ユダヤ人のためヒットラー政権下フランスへ亡命し、戦時中は仏収容所へ。戦前から50年代まで独・仏の数々の名作映画のスチール写真を残す。約100点の写真と彼の生きた道程を追う資料。1/7迄
Go奏he-Institut: 17 av.d’Iena 16e
●Francis BACON (1909-1992)
自画像、50年代制作の「教皇」や1991年の三部作など。12/16~1/30
Galerie Lelong : 13 rue de Tehan 8e
●Andre HAMBOURG (1909-)
20年代はエコール・ド・パリの画家として、その後ヨーロッパ、アフリカと創作の場を変えて精力的に活動。南仏サンレミ・ド・プロヴァンスで制作した1947年から95年までの作品展を2カ所のギャラリーで同時開催。1/31迄
*Galerie Francis Barlier:
36 rue de Penthievre 8e (油彩画)
*Galerie Visconti: 35-37 rue de Seine 6e
(パステル画・デッサン)
●Un siecle de collage en Belgique
今世紀さまざまなアートムーブメントに登場したコラージュ。Alechinsky, Bury, Magritte, Mesensなどベルギー人アーティストのコラージュ作品。2/20迄
Centre Wallonie Bruxelles: 127-129 rue St-Martin 4e (月祭休)
●Le Fauvisme ou l’Epreuve du Feu
今世紀初頭フランスで、ゴッホやゴーギャンに影響を受けながら、マティス、ドラン、ヴラマンクら若いアーティストたちは、混じり気のない強烈な色を自由なフォルムで炸裂させて美術界に強い印象を与えた。ヴァン・ドンゲン、ブラック、マルケらも含む「野獣派」の作品200点以上が一堂に。 2/27迄
パリ市現代美術館
11 av. President-Wilson 16e (月休)
●アメリカ人アーティスト2人のエクスポ
*Herb RITTS (1952-)
日本にもファンが多いRITTSの作品から80~90年代のハリウッドスターやモードの写真を中心に展示。
*Sarah SZE (1969-)
日常の細かな品々を繊細な作業で壮大にインスタレーション。
Fondation Cartier: 261 bd. Raspail 14e
12/11~3/12 (月休)
●Le Maroc de Gerard RONDEAU
1832年にドラクロワが訪れたモロッコを写真家 RONDEAUが辿る。旅行中のドラクロワのデッサン、水彩等も展示。
Musee Eugene Delacroix: 6 rue
Furstenberg 6e 12/10~3/13 (火休)