治安対策の一環として、サルコジ内相が全力を投入している課題に、東欧から押し寄せてくる外国人売春婦問題がある。 もう一つの問題として、最近、ルモンド紙が報道していたように、ルーマニアが2002年1月よりシェンゲン協定国(加盟国内を自由に移動できる)となったことにより、パリで急に目につくようになった、ルーマニアから観光ビザで入ってきている身障者の物乞いがあげられる。 外国人売春婦の問題から追ってみよう。 フランスには全国に約2万人の売春婦がいて、半数はパリで稼いでいるという。その6割以上は外国人であり、約3割はゲイの売春だそうだ。彼女(彼)らの稼ぎ場は、パリではサン・ドニ街やヴァンセンヌ、ブローニュの森といった従来の界隈から環状線沿いの地区に移りつつある。一方、ストラスブールやエクス・アン・プロヴァンス、メッツ、オルレアンなど地方都市では都心に集中しているという。 91年以降、ベルリンの壁崩壊で堰をきったように労働者が西側になだれこんできただけでなく、二束三文で身を売る売春婦たちも移動してきた。この10年間で東欧からEUに約50万人の売春婦が入ってきているとみられる。こうした情況のなかでオランダは2000年に、ドイツは2001年に売春を合法化し、”エロスセンター”と呼ばれる売春宿を認可している。 フランスでは、売春は禁じられていないが、昔からメゾン・クローズと呼ばれる売春宿は46年に閉鎖され、売春婦の警察への登録制度も廃止された。新刑法では、あからさまな客引きは罰金1500ユーロ、売春斡旋や売春を強いるヒモは1500~3万ユーロ の罰金と禁固6カ月から2年(10歳未満の未成年売春のヒモは禁固10年)。また公共の場での性行為の露出は禁固 1年+1万5千 ユーロ の罰金が科せられる。 東欧からの売春婦に対する対策としてサルコジ内相は、合法・不正入国に関係なく、現行法に違反した外国人売春婦は自動的に国外退去させる法案の作成を急いでいる。一方、パリ市は売春客を取り締まる方針で、客に対し禁固1年+ 3万 ユーロ の罰金を科す法案を準備中だ。 夜の街に売春婦が徘徊するなら、日中、地下鉄構内や歩道で目を引くのは、通行人が目をそむけたくなるような痛ましい身体障害を見せ物にする物乞いだろう。ルモンド紙によれば、彼らのほとんどは通称ジプシーと呼ばれるルーマニア出身のロムたちだ。欧州に散らばる約260万人のジプシーのうち、ルーマニアがいちばん多く約200万人が居住。89年末、チャウシェスク体制崩壊後、経済的社会的復興が遅れるなかで彼らに対する民族主義的差別が強まり、彼らの半数は職もなく子どもたちも無教育状態にあるという。 このような悲惨な情況にあるジプシーを、なかでも身障者を利用するのはいうまでもなくマフィアだ。観光客が集まるパリに、人身売買式に売春婦やひったくり少年、身障者たちが連れられてきている。彼らは、欧州をまたにかけるマフィアにあやつられる現代の”奴隷”なのである。 拡大するEUが背負いこむ、加盟国間の貧富の差がなせる必然の現象か。(君) |
フランス国内の売春婦 6000euros パリのプロ娼婦の平均月収 |