サッカーだけで彩られるべきこの5月、6月に大統領選、総選挙と国民は4回も投票に駆り出され、極左から極右までゴマンといる候補者の演説も耳にタコ。そして大統領と首相がシュウト・ムコ関係になる保革共存政権はもうまっぴらと、6月16日の総選挙決選で大統領与党連合(UMP)に577席のうち369席を与えた。国民議会、上院、憲法評議会、地方圏議会、県議会と、全国政機関をシラク派が掌握するという、一党支配の5年間が始まるわけである。 ジョスパン前首相が大統領選予選で破れて以来(ジダンが開幕前に致命的な負傷を負ったように)、左派市民は希望をなくし、メーデーの日の反ルペン・デモで見せた気概も失せたのか無関心と棄権(39.71%)にくみしたよう。よって左派政党は負けに負け、社会党は残党議員141人(選挙前248席)という小所帯の野党に。オランド書記長、ファビウス前経済相、ラング前教育相、ギグー前社会相など、数人の前大臣たちが議席をとりとめている。 が、いちばんの痛手は、ジョスパン政権の花形大臣で、35時間制の産婆役となったオブリー・リール市長が、32歳のほとんど無名のUMP候補に破れたことだろう。 35時間制の恩恵を充分に得られない中小企業の社員や、20人未満の企業は2004年からと、上から強制され現実を無視された零細企業主たち、ラファラン新首相のいう”France d’en bas” (下部のフランス) からしっぺがえしを食らったといえよう。ジョスパン世代の終焉? 社会党にとって煉獄の5年間が始まるわけだ。 共産党も、議会で政党グループをなすのに必要な20議席以上の21席をかろうじて得たが、ユー書記長が落選。緑の党のヴォアネ党首も落選。左でも右でもなく共和主義を掲げ横車を押してきた「共和政の中心」党シュヴェヌマン党首・元内相 も36歳の若手UMP候補に破れ、29年の議員生活に終止符を打つというどんでん返しが各地で起きている。 が、全国で左派が大敗するなかで孤軍奮闘したのがパリの左派候補で、新たに3人が当選し、21議席中、過半数の12席(緑の党2人)を獲得。”ブルー” 派 (右派) の大軍に抗するドラノエ・パリ市長と左派系市民のレジスタンスなのだろう。 一方、ルペン派国民戦線党(FN)の負け方はどうだろう。決選には予想を下回る37候補しか残らず、パ・ド・カレで立候補したマリーヌ・ルペン候補(党首の3女)も落選し、予想を裏切り全滅 ! FNの惨敗は、シラク式治安処方箋でルペン熱が冷めたのか、大統領選でルペンを支持したかなりの投票者がFN党との火遊びから手を引き、棄権したためとみられる。 勝ち誇るシラク大統領の影で忠実な従僕として、容貌もリノ・ヴァンチュラを小振りにしたような地方出のラファラン首相。テクノクラートによる政治に冷たくされた国民には、親近感と信頼感を与えるのだろう。 それにしても国民は、ジダンたちが王者の座からいとも簡単に追われたように、ジョスパン政権も自信過剰により破綻したことを、同時に認めざるをえないのだ。(君) |
総選挙の結果 |