シネフィル青年のアパートをのぞいてみた。 18区。地下鉄Marcadet-Poissoniers駅 。家賃3000F。

 映画について聞けば分からないことはないと評判のニコラくん。パリ第3大学で映画理論を勉強し、現在は名門FEMISの監督コース入学に向け受験準備中という生粋のシネフィル青年だ。
 彼がパリ18区のこのアパートを探し始めたのは昨年の6月。希望条件は膨大な数のビデオカセットと友だちを呼ぶためのスペースが十分にあること、そしてもちろん先々のことを考え、FEMISのそばであることだった。最初から不動産屋を通し部屋を探したので、怒濤のアパート探し競争に巻き込まれることもなく、たった2日で希望条件を満たした現在のアパートに決めることができた。6階だから階段をのぼるのが面倒そうだけど「運動になるし問題じゃないよ。日当たりもいいし家具付きで便利だし部屋に不満はないんだ」といたって満足なご様子だ。
 やはり部屋の主役は映画関連グッズ。『エクソシスト』『2001年宇宙の旅』『スー
パービクセン』『蜘蛛の巣城』など様々な映画のポスター、チラシ、ポストカードが堂々と壁を占拠する。そして戸棚にはビデオ、DVDのコレクションの数々。中には中国人街やインド人の商店でしか手に入らないレアな商品まで顔をのぞかせる。ビデオコレクション中で偏愛の一本をたずねてみたら「うーん」とちょっと唸った挙句、わが日本の名匠、小林正樹監督の『切腹』をチョイスしてくれた。
 さて友だちの多いニコラくんはFEMISの学生など映画仲間と頻繁にビデオ上映会をしているとか。フランスでは引っ越し後に仲間を呼びパーティを開くことが多いが、先日彼は友だちをいっぺんに呼んで楽しむ口実にやっとそのパーティを開いた。27m2という空間に15人から20人ほどが押し寄せたというからその寿司詰め状態が想像できる。「これは友だちが飲み物をこぼしちゃって」とニコラくんが指差した場所に目をやると、白い絨毯には黒い染みがいくつも広がっていた。さながら映画『パーティー』顔負けの饗宴(狂宴)だったのだろうか?(瑞)


【ニコラ流シネフィル道】
●L’ouverture d’esprit 精神の開放
常に映画との新しい出会いに身を委ねる精神の開放を知るべし。
●La patience 忍耐
映画待ちの列とサンドイッチ片手の映画のはしごに耐える忍耐を備えるべし。
●La mobilite 行動力
気になる映画祭があれば遠隔地でも飛んでいく行動力を持つべし。


戸棚いっぱいのビデオコレクション。『切腹』『子連れ狼』など日本映画もたくさん。

日本人の友だちとビデオを鑑賞中です


映画のポスターが壁を埋めている。

映画学校FEMIS(旧IDHEC)
 ニコラくんが入学に希望を燃やす世界的に有名な映画学校。アルノー・デプレシャンやドミニク・モルなど映画界の新しい才能を多く輩出する。FEMISの前身IDHECがあったパレ・ド・トーキョーから場所を移し、現在の建物は映画会社パテ社の旧スタジオ跡。基本的には部外者は気軽に入れないけれど、受付で映画関係のチラシや資料が手に入る。また年に一度だけ、誰でもFEMIS内を見学できる日la journee porte ouverteが用意されていて、次回は来年2月頃の予定だ。
*6 rue Francoeur 18e
01 53 41 21 00 www.femis.fr