一般医、看護婦の不満爆発。

 昨年末には警察官や機動隊員、現金護送係員と相次ぐ殉死に対する同僚の怒りのデモ、年頭には障害児出産問題(先号参照)をめぐり超音波検査員らのストと、徒ならぬ状況のなかで迎えた2002年。
 そして1月22日には全国の一般医が「医師ゼロデー」ストに突入。同日、看護婦(夫)たち5千人余りが機動隊の催涙ガスにも怯まず首相官邸までデモ行進した。
 筆者が一昨年暮れに田舎でギックリ腰になったとき、十数キロ離れた町から医者が往診に来てくれた。往診料は165F+追加料25Fだった。看護婦は車で朝晩、痛めどめの注射をしに来てくれた。注射代は1回17F50+追加料9F(夜間30F/祝日100F)だった。その額に目を疑った。88年以来の料金だという。彼女は朝7時から夜8時まで数村にわたって1日約25人の患者を看護して回る。水の出ない老朽家屋に独りで暮らす老人患者の世話までする。雪の日も雨の日も田んぼ道を走らせ、昼は車内でサンドイッチですますという。デモ行進した看護婦たちを”コゼット” (『レ・ミゼラブル』の女主人公)とメディアが評していたが、それは誇張でもカリカチュアでもなく、辺鄙な田舎でその一人から看護を受けた者としての実感だ。
 全国に一般医は6万人いる。一般医組合は、診察料17
50(115F)を20(131F)に、往診料30(196F)への値上げを要求し、昨年11月以来当直ストを繰り返している。そのため総合病院や救急医に風邪や腹痛などの軽症患者が殺到し、てんてこ舞いの状態をテレビが報道していた。
 ルモンド紙(02/1/24)に掲載された、レンヌ大学教授トルショ社会心理学者がブルゴーニュ地方の医師400人を調査した結果、《47.2%は精神的虚脱感》を、《68.5%は患者との緊張関係からくるストレス》を訴え、特に患者の《攻撃的》な態度を特筆している。そして使い捨て的に医師を《ティッシュと同じようにみなす》患者が多いという。以前は私生活重視の医師は7.9%だったのが今は41.7%と、医業に幻滅し仕事として割り切る医師が急増。同教授は「医師たちは患者からの報われない気持ちを診察料の値上げという代償で埋め合わせようとする」と結んでいる。
 1月24日、政府と健康保険公庫、一般医の少数組合MG France(15%)の三者会談で、2月1日から診察料の値上げ(17
50→1850)や、20分以上かかる掘り下げた診察に対する診察料(23ロ)の新設などを決定。が、多数組合Unof (一般医の75%が加入)は診察料20、往診料30を要求し、2月15日~17日に再度ストを決行。なかには診察料をすでに20に上げた一般医も出始めている。
 また35時間制実施の病院も前途多難。政府は3年間に看護婦4万5千人の増員を予定しているが、スペインから看護婦を募集する病院から、効率の低い科を閉鎖する病院、夜勤当直を外国人医師に任せる病院まで時短の余波をかぶっている。
 このように縦からみても横からみてもフランスの医療界全体が健康不全にあると言いざるをえないのである。(君)


一般医組合(MG France) 合意の新料金

18.50 診察料 (2月1日から)
23
慢性病の診察料(3月1日から)
37.5
  当直診察料 (2月1日から)+35(20h-0h) / +40(0h-6h)
37.5
  日・祭日・土曜午後追加料金
30
自宅治療診察料を75歳以上の慢性病患者にも適用
(Libération : 2002/1/25)