マルヌ県に広大な領地を持つ貴族の跡取り娘シーニュは、自分の元召使の息子で、ナポレオン政権下でマルヌ県の県知事にまでのし上がった男に条件付の結婚を迫られる。自分より卑しい身分の男には「悪い血」が流れているとさげすむシーニュだが、懇意にしている神父に「カトリック信者としての義務を果たし、ナポレオンの人質となっているローマ法王を救うためにも自己を犠牲にするべきだ」と説き伏せられ結婚を承諾する。だがシーニュの本心は愛する従兄弟の身を救うことと家名を守ることだった…。 この舞台劇は19世紀の歴史を、ある一家の運命とともに追った三部作の第一部で、作者ポール・クローデルは「人間と神の闘いを描いてみたかった」と後に書き残している。自己の感情を欺き神の手に運命を委ねるシーニュの潔癖で気高い魂は、ついに夫だけでなく自分をも許すことができず、死を選ぶことでようやく平穏をつかむ。珍しくクラシックな題材を選んだベルナール・ソベルの抑えた演出が、シーニュ役のカリ—ヌ・バイロドの地味だが滋味のある演技をよく引き出している。光と影をうまく利用した舞台美術も効果的にドラマ性を盛り上げている。 |
4/14日まで。 01.4132.2626. |
●Faut pas payer ! 度重なる物価の上昇に怒った労働者階層のおかみさんたちが、近所のスーパーに大挙して押しかけ、商品を無料で持ち出す、という事件が巻き起こす悲喜劇の数々が、二組の夫婦を中心に描かれていく。イタリア共産党に傾倒し、労働者階級から絶対的な人気を得た作家ダリオ・フォ (1997年にノーベル文学賞受賞) が、1970年代に実際に起こった主婦暴動をヒントに書いたのがこの戯曲。 前半はコメディア・デラルテを意識した大仰な言い回しや動作が悲しく宙に浮いて、白けた雰囲気に包まれていたのが、後半に入ってからは舞台展開のテンポが早まり活気を帯び、喝采に迎えられて幕を閉じた。前半のまだるっこしさを解決し、後半とのバランスをつかめれば成功する劇といえる。演出はジャン=ピエール・アンドレアニ。 |
* Theatre du Renard : 01.4271.4650. |
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