近代 (作品) と現代 (出演者) のミスマッチ Monsieur chasse !

 狩に行くというのは口実で、妾と逢瀬を重ねるブルジョワ男デュショテルの嘘が妻にばれる日がやってきた。怒りと嫉妬に燃えた妻は、腹いせに夫の友人で医者のモリセの誘いに応じ、密会の場所へ出向くのだが、なんとそこは夫の愛人が住むアパルトマンの向かい。加えて、同じ場所に下宿する恋人のもとへ忍んできたデュショテルの甥、姦通の罪でデュショテルを逮捕に来た警部が鉢合わせして大騒ぎになる。
 スランプに陥っていた当時30歳のジョルジュ・フェドーに、ボードビル劇作家としての王道を歩むきっかけを与えた記念すべき作品が、初演 (1892年) されたパレ・ロワイヤル劇場に1世紀以上を経て再び戻ってきた。しかもお笑い人気コンビのレジス・ラスパレス&フィリップ・シュヴァリエを主演に迎えたのだから、興行側も観客側も笑いが止まらない(ジャン=リュック・モローの演出はこのコンビの前舞台 “Ma femme s’appelle Maurice” でも成功を収めている)。フェドーならではの速いテンポで次々に展開する事件と騒動が (大筋さえつかめていれば理解できる)、わざとなのか自然なのか判断しがたいワンテンポずれたラスパレス&シュヴァリエの独特なリズム(台詞回しと動作で笑わせるので難なく理解できる) に混ざり、時代も状況も古びたような新しいような、不思議な雰囲気をつくりだす。出演者はいずれも素晴らしく息の合った演技を見せるが、中でも妻レオンティーヌ役を演じるソフィー・ブルスタルの、優雅な容貌とは裏腹の喜劇役者ぶりに出会えたのは嬉しい発見だった。(海)
*Theatre Palais Royal :
38 rue Montpensier 1er 01.4297.5981
火・金/20h30 土/17h30と21h
日/15h30 70F~250F

●Les monologues
de Vagin
 タイトル『ヴァギナのひとりごと』とは一体なんだろう?と気になっていた。ヴァギナ=恥部の独り言ならば、性についての暴露話なのかな…と想像はしていた。調べてみるとアメリカ人劇作家エヴァ・エンスレ—が200人の女性から実際に聞き出した悩みや打ち明け話を元に書いた芝居だとわかった。おまけに演出家は私の好きなティリーだし…で観た感想は「軽やか、可笑しい、感動的」。独り芝居だけあって演じる女優の力量が物をいう。私が観たソフィー・デュエズはどちらかというと庶民的なパンチのきいた女優で、舞台にはエネルギーが充満していた。もうひとりの女優クリスチーヌ・ボワソンは、優雅で冷ややかな演じ方をするのだろうな…と想像。これも各人の性格、というかヴァギナの違いかな…お試しあれ。(海)
*Petit Theatre de Paris 01.4280.0181.

DANCES
●Sidi Larbi Cherkaoui
 ベルギーのモロッコ人家庭に生まれ育ったが、マイケル・ジャクソンの踊りをテレビで見てダンスのトリコになり、独りで踊りをマスターしたというシディ・ラルビ・シェルカウイ。そのユニークな動きがベルギーのダンス界で注目され、今回の “Rien de Rien” で初の振り付けに挑む。回教、従来のバレエ、愛、自分自身などとの葛藤が踊られる。名チェリストのロエル・ディエルティエンスがコダイやリゲティの曲を舞台上で演奏する。
7日~10日/20h30 85F
*Les Abbesses : 31 rue des Abbesses 18e 01.4274.2277
●La Ribot
 演劇的、絵画的要素を取り入れながら13の短い作品をソロで踊ったりして俳句ダンスなどと呼ばれたラ・リボットだが、現在はスペインを代表するダンサーとして認められている。今回の “Still distinguished” もソロ作品だが、ダンサーと観客を切り離していた舞台を取り払い、衣装も捨て、その「境のない表面」で観客も参加するパフォーマンス。
13日/21h 14日~17日/19hと21h 70F
*Theatre de la Ville : 2 place du Chatelet 4e 01.4274.2277


La Ribot