『4人の双子』と名づけられたこの芝居は、アルゼンチン生まれのコピが1973年に書いた戯曲で、同年にジョルジュ・ラヴェリの演出で初演された。その時舞台を踏んだ4人の双子のひとり、デイジー・アミアスが今回は演出する側にまわっている。いかにもラテンアメリカ的でどろどろとした要素 (麻薬、同性愛、近親相姦、犯罪など) をブラックユーモアでくるんでしまうコビの独特なエスプリを忠実に尊重するアミアスは、大胆にも4人の双子を全部女装した男優によって演じさせた。双子ははたして男なのか女なのか? 性別不明、血縁関係の有無すらあやしい4人の肉体が地面の上をのたうちまわり、「売女!」「ゲス野郎!」「ばか女!」と叫びながら暗闇の中でからみあう死闘のシーンは、そのあまりの不条理さに涙が出るほど笑い転げてしまう。これがコピの芝居の醍醐味。興奮の中、50分が過ぎていく。(海) *Cartoucherie Theatre de la Tempete: route du Champ de manoeuvre 12e 01.4328.3636 9日まで (火−土20h/日16h30) 80F/110F(毎週水曜は均一50F) 1970年代のモンパルナスからサンジェルマン・デ・プレ界隈で、本業だった画家としてではなく有名人にたかる名人として知られたアメリカ人女性シャーリーが、カフェのテラスで書き残した覚え書きノートが “Sharly”(1)という舞台劇に書き直された。カフェの椅子に腰をかけ、周囲を見回しながらノートをつけるシャーリーを演じるジュディット・マーグルのとめどないおしゃべりが、70年代の自由で気楽だった雰囲気を伝えてくれる。 パリで教師を務めていた作家マルセル・ジュアンドー(1889-1979)宛に、死の直前まで毎日8年間母親が書き送った手紙が、マルセル・マレシャルと、今は亡きマドレーヌ・ルノーの声によって朗読される舞台が “Lettres d’une mere a son fils”(2)。飾り気のない文章が美しく感じられるのは、息子を自分の分身として、また時には一人の異性として思いやる母であり女である書き手の心が伝わってくるからだろう。 *Theatre du Rond-Point Champs Elysees : 2bis av.Franklin Roosevelt 8e 01.4495.9810. (1)は23日まで。18日~23日の間は追加公演中の(2)のすぐ前に上演されるが、入れ替え制で料金は別々。
●Honved Ensemble
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