窓から色々な音と匂いが入ってくる。

 ラタイエフスカ親子が住んでいるのは、リボリ通りとロジエ通りを結ぶ、フェルディナン・デュバル通り。細長い中庭に面した30m2のステュディオには、様々な音が飛び込んでくる。「子どもの遊ぶ声、ピアノ、夫婦ゲンカ、セックスの喘ぎ声、バカな犬と利口な犬の吠える声、声楽のレッスン…。でも静かすぎる場所より、このほうがいいわ」と在仏12年の娘のアンナさん。土曜の夜はシナゴーグから大合唱が響いてくる。

窓際にはラベンダーを植えた。

 



 このステュディオに移って6年。ポーランドでは陽当たりのいい家に住んでいたから、北向きのこの部屋の暗さが気になり、壁を白く塗った。以前は、同じ通りの真向かいの建物の最上階、15m2の〈女中部屋〉に住んでいた。「陽当たりは抜群だったけれど、狭いし、トイレも共同。家賃は毎月1100フランだったけれど、300フラン程度の価値しかない部屋だった。持ち主にとってはいい収入源ね」大家が部屋を売るので、立ち退くことになった。でも、マレから出たくなくて近くの不動産屋で見つけたのが、今の物件だ。レストラン “chez goldenberg” と棟続きだった前の住まいには、レストランの音楽が聞こえてきた。今のステュディオは “chez goldenberg” の肉や魚を燻す場所が近く、その香りが流れてくる。この界隈にこだわるのは、中心だからどこへ行くにも簡単だし、商店が多い、故郷ポーランドを彷佛とさせるから、という。

 

家具は折畳みのものが多い。
お母さんは「恥ずかしい」と台所へ。料理だけ写真に参加。

 




 お母さんも、もう少し広くて明るいアパートに引っ越したいと思っている。母国で小学校の先生をしていた彼女は、娘がこのステュディオに越してからパリにやって来た。家政婦として働きながら国へ仕送りをする。母子団らんのときは、何をする?の質問に「食べる」との答え。そういえば私も実家で母と一緒のときは、何かしら食べていることが多い。午後5時、お母さんが仕事から帰って来る。買物袋を台所へ持って行き、料理を始める。ラタイ1エフスカ親子の団らんがこれから始まる。(美)
ファラフェルの王様。



 
ラタイエフスカ親子宅を出て30歩、アンナさんとロジエ通りへ。ヒヨコ豆の揚げ団子〈ファラフェル〉入りサンドイッチ屋が軒を並べる。「一番美味しい店は
“L’as de fallafel”」と学生の頃から決めつけているアンヌさんに対決を挑む。今までも新しい店ができると挑戦してきたが”l’as”
は手強い。”chez Marianne”
はピタパンをオーブンで温めたり、サンドを待ちながらピクルスをタダでつまめるのも嬉しいが、今日はそれが塩辛い。22F。”mi-va-mi”も試して
みた。20F。レタスはいけない。揚げたナス、キュウリ、キャベツ等を重点的に入れてほしい。”l’as”
のスペシャルは25Fと一番高いが、野菜とファラフェルの詰め方(野→ファ→野→ファ)が親切だし、スパイシーで塩味しっかり。『真似されるけれど、違い
のある』のキャッチフレーズを店頭に掲げる自信は、食材の質、とは店の御主人のイサクさん。21年前にイスラエルからパリへ観光に来て、ファラフェルがな
いことに気付き、翌年この店を開いた。エジプトにもレバノンにもファラフェルはあるけど、ここはイエメン風。アンナさんとの結論は、やっぱり”l’as”
が王様。(美)
*34 rue des Rosiers 4e 金夜・土休
www.notresite.com/as-du-fallafel