パリ15区、エッフェル塔の西にあたるセーヌ川沿いに 、”Front de Seine”と呼ばれる、60年代から70年代にかけて建設された高層ビルディングが立ち並ぶ一帯がある。この時代、ラ・デファンスを皮切りに、パリはモダニゼーションの渦中にあった。ここには、アンリ・ポチエ、レイモン・ロペらによって建設された、当時最先端の高層ビル建築20棟が立ち並ぶ。その中の一つ、「Tour de Seine」に韓国人留学生、ジュヒ・リーさんは住む。 彼女がここへ引っ越してきたのは今から約1年半前で、それまではずっと5区のムフタール街に住んでいた。日当たりも良く、市場も近く、言うことなしのアパートだったのだけど、ある日泥棒に入られてしまい、デリケートな彼女はすぐに引っ越しを決意した。少し大げさめのフロント、”24時間監視付き”ステュディオに越してきたのはこんなわけだった。「とにかく、不安でたまらなかったの。ここは狭くて高いけど(20m2で3500フラン)、安心して住めるでしょ」 ”フロン・ド・セーヌ”の中でも、一番最初に建てられた「トゥール・ド・セーヌ」は25階建て、ホテル・ニッコーのちょうど東隣にあたる。ガラス張りの大きな入り口を入ると、まず、スタートレックのような警備室が目につく。中には怖そうな、だがきっと根は良さそうなおじちゃんが座っている。普通のアパートよりもチェックが厳しく、何階へ何をしに行くのか質問される。二つあるエレベーターのうち、左側に乗ってジュヒさんの部屋がある6階へ。右側のは、14階から最上階まで行く急行になっている。彼女の部屋は、シャワー・キチネット付きのワンルームで、まるでどこかのホテルに来たみたいだ。(ここは以前、ホテルとして機能していたのだろうか?)窓からは、周りにそびえるHachette社などの高層ビルディング、そしてセーヌ川が見える。ジュヒさんは窓からバトームーシュや、シャイヨー宮、ビルの中で働くサラリーマンを眺めてぼーっとするのが好きなのだそう。 30年前に造られたこの未来都市は、今も、パリジャンの生活の場として、仕事場として活躍している。
(ア)
Bar du Centre
”フロン・ド・セーヌ”の中には、「 Beau Grenelle」というショッピング・モールがある。服屋、カフェ、パン屋、カメラ屋に郵便局まで、何でも揃っていてとても便利。
地上階にある「Bar du Centre」は、バーの半分が遊歩道に面していて、高層ビルを眺めるのに最適のシチュエーションだ。ホテル・ニッコーを眺めながらコーヒーを飲んでいると、60年代にタイムトリップした気分になる。
*16 rue Linois 15e 01.4059.9141
8h – 20h(日曜休)M! Charles Michels