欧州の原発の未来
ドイツはとうにこの計画から撤退しており、電力会社も原子力から撤退すると表明している。イタリアも1987年の議会での投票で、原子力開発を放棄した。スウェーデンは、スリーマイル・アイランド原発事故の二年後の1980年、国民投票を実施し 58%を獲得して、現行の計画以上は原発を発展させないことを決定した。1997年2月、バルスバックの二基の原子炉を最終的に廃炉にする日程も決めた。スウェーデン市民ははっきりと脱原発を選択した。これがヨーロッパの商業原子炉の初の廃炉となる。 今日、フランスは56基の軽水炉と1基の高速増殖炉フェニックスを稼働させており、現在、建設中の2基を含め、日本と並んで突出した原発大国だ。すでに14基がモックス燃料(ウランとプルトニウムの混合燃料)を搭載しており、危険度は一段と増大している。論調は変化したとはいえ、原発からの脱出はまだまだ難しそうな雲行きである。これからの課題 今後、起こるのは核の再処理、モックス燃料、ゴミの貯蔵、廃棄物輸送の問題である。核兵器の必要性が低下し、高速増殖計画が破綻した今、極端に毒性が高く半減期が気の遠くなるほど長いプルトニウムを産出する再処理を続ける必要があるのか、たいへん疑問だ。またすでに製造済みのプルトニウムを処理する方法として、モックス燃料を使いはじめているが、製造、輸送、使用時の経済性、安全性の点から見ても問題は多く、後追いしようとする日本の悪しき先例となっている。 またこれから正念場を迎える核廃棄物の地下貯蔵問題もさしせまった重大事である。5月末に、地下貯蔵に反対する大きな国際集会が、地下研究所の予定されているフランス東部ビュール村近くのヌフシャトー市で開催された。悪天候にもかかわらず、3千人余りが参加し、予定地の畑に麦の種をまいて、放射能よりも「生きている大地を!」と訴えた。ヨーロッパ諸国や日本からも岐阜県瑞浪市を含む東濃地方の代表がアピールを行った。 誰でも不安なく暮らしたい。だが、原発ナシの方策はあるだろうか。それを可能にするもう一つの社会のあり方を創出できるだろうか。行き場のない核のゴミをどうするのか。そのゴミを生み出す原発を稼働させ続けてよいのか。未来世代に対する責任がわたしたちに問われているのである。 未来世代に、地球という遺産を継承するのではなく、サン・テグジュペリの言うように、わたしたちは「未来の子供たちから、この大地を借り受けている」のだから。
コリン・コバヤシ
*本文は『現代思想』5月号に寄稿した「欧州エコロジー運動の現在」をもとに改稿したものである。写真提供はGreenpeace France
(1) CEA : Commission /l’Energie Atomique
31-33, rue de la Fedration, 75015 Paris
tel. : 01 40 56 10 00
(2) Nouvel Observateur, Essais nucleaires : Les archives interdites de l’armée N+$i25年間操業して閉山する。ドラム缶百万本分が不法投棄されていたのが1988年に発覚し、大問題となった。現地の植物、茸、川魚に放射能汚染が検出され、防毒マスクもつけずに働いていた旧作業員百人以上が肺ガン発病の危機に晒されている。
(5) CRILAN : Comite de recherche et d’information et la lutte antinucléaire
10, route d’Etang Val, 50340 Les Pieux
tel. : 02 33 52 45 59
(6) ACRO : Association pour le contrôle de la radioactivite dans l’Ouest
138, rue de l’Eglise, 14200 Herouville Saint-Clair tel. : 02 31 94 35 34
(7) CRII = RAD : Commission de Recherches et d’Informations Independants sur la Radioactivite
31-33, rue de la Colonie, 75013 Paris
tel. : 01 45 65 47 93
(9) ANDRA : Agence Nationale pour la gestion des déchets radioactifs
1/7, rue Jean Monnet, 92298 Chatenay-Malabry
tel.: 01 47 87 09 09
(10) British Medical Journal N1>21, rue Dodot de Mauroy, 75009 Paris
tel. : 01 53 43 85 85
(13) Les Européens contre Superphenix, actuellement “Réseau Sortir du Nucléaire”
9, rue Dumenge, 69004 Lyon
tel. : 04 78 28 29 22