どうも最近不感症(!?)で、映画を観ても大体が「な~んだ、で、だから?」という感想で、めったに作品にのめり込めなくなった。年齢のせいか、職業病か? そんな (吉) がブッ飛んだ映画がある。フランス映画としては『野性の夜に』以来の出来事だ。これは大変なことだ…
監督のフランソワ・オゾンは国立映画学校 FEMIS の出身で、94年から短編を撮って来た若手。昨年秋に公開された中編『海を見る/Regarde la mer』が一部でなかなかの話題になった。海辺の一軒家で休暇中の乳飲み子を連れた母親、そこにヒッチハイカーのちょっと薄汚い娘が庭にテントを張らしてくれとやって来る…一見のどかな始まりなのだが、どこか空気が張りつめていてサスペンスの予感…超ブラックな結末が待っている。このブラック加減に対する好き嫌いはあっても皆一様に、オゾンの演出力には一目おいた。
そして初の長編『Sitcom /連続ホームドラマ』の登場(5/27公開)! もう大変な映画である。舞台は典型的なブルジョア一家、そこに通いのスペイン人の家政婦が雇われ、やって来る。その日、一家の主人は、なぜか二十日鼠をお土産に買って帰る。一家の変調はこの時から始まった。クソまじめ風な長男が「僕はホモである」宣言をし、一番クールで我関せず風の長女が自殺未遂、いったんタガが外れた一家は何処までも果てしなくクレージーに… どうにかたづなを引き締めようと独り必死の母親までが、思い余って、彼女としては良かれと思って“えっ、そこまでやる~ !? ”というようなとんでもない行動に出る。しかし全ての元凶は… またもやとんでもない結末が待っているのだ。もうこれは観てのけぞって頂くしかない。徹底的に手加減しないところがオゾンの凄さだ。 (吉)