
レジの内側からは、外がこんなふうに見える。メトロの入口がある広場に面している。
パリ市の狙いは、キオスクで働く人たちの労働環境の改善。「前より暖かいね。開・閉店にかかる時間が15分くらいで済む。前は1時間くらいかかった」とアブダラさん。レジがある場所は、透明の仕切りを閉めれば小さな空間になって効率よく暖められる。レジのスペースは店内より15センチほど床が高くなっているから、足元が冷えないという利点もある。

(左)レジのある空間は、透明の仕切りを締め切れば効率よく暖めることができる。(右)外も内も、角をとったデザイン。
「以前は、自分の背後に新聞・雑誌があったので、注文されると客に背を向けてそれを取っていた。そのスキに物を盗まれたこともあったな。外に対して無防備になるのが不安な時もあったけれど、新型キオスクでは客は自分で商品を選んで手に取ってレジで支払うから安心」とアブダラさん。非常口も設けられている。希望すればトイレ設置も可能だったが、乾燥トイレは手間もお金もかかるし、何より貴重なスペースが取られるので、ふたりは希望しなかった。周囲にはカフェもレストランもあるから、そこで使わせてもらうのだ。

(左)トイレより収納スペースを希望。棚はシャッター扉を閉めれば施錠できる。コーヒーメーカーも置いた。(右) 毎朝3社が新聞雑誌を配達する。そのうち1社はこの扉の鍵を持っていて、ここに商品を置いていく。「非常口でもあるんだ」。他の2社は、キオスク外側に設けられた小さな扉のなかに商品を配達する。
新しいキオスクを使いこなすため、研修を2日間受けた。「オンラインでの各種イベントのチケット販売、郵便ポストの代役、売り切れた新聞や雑誌も、まだ在庫のあるキオスクがオンラインでわかり配達してもらえるシステム」とキオスクの資料にあるが、ふたりはやっていなかった。新型キオスクは、内側にいると雨風から守られるのも利点。「雨宿りはいいけれど、待ち合わせの時間つぶしに使われるのはイヤだな。立ち読みもお断り。目次を見るくらいなら許すけどね」とアジズさん。

イダルゴ市長(右)は、リニューアル前と後、2回キオスク視察に訪れた。左は、アブダラさんの息子アジズさん。
通勤時間を合わせると、1日15時間労働という人も珍しくないキオスクの仕事。でも、行き交う人々を眺め、接客し、ガミガミうるさい上司がいないのも好きだというイディリ親子。活気ある町には、こんな人たちの、こんなキオスクが欠かせない。(美)
