造形作家の嘉野稔氏は1930年、奄美大島生まれ、7歳の時、1人娘しかいない祖母の養子になる。芸大卒後、政府留学生として57年に渡仏し、国際大学都市日本館に入る。ロマネスク彫刻に心酔し、創作を続け、2007年にパリ郊外で亡くなった。未亡人のミサワさんは85歳。日本テレビの留学資金で渡仏した。日本語を教え、仏ラジオの日本語放送も担当。
お二人は70年代にパリ東部郊外に庭付き家屋を購入され、アトリエと菜園もお持ちですね。
90年代に私の母を呼び寄せ20年近く一緒に暮らしました。私は旧東洋語学校で日本語を教えるかたわら中央公論のパリ代表に。マリ・クレール誌にパリ情報を書いていました。70年代以降、仏国営放送は約30カ国にフランスの情報を各国の言語で放送していました。その仕事を15年ほど担当。日本語とフランス語の狭間で生きている者にとって、西洋語にはギリシア・ラテン語からくる語源がありますが、中国語や朝鮮語・日本語、アラビア語など、西洋語とかみ合わない相違は、ITで100% 置き換えるのは不可能だと思います。世界で貴重な言語といわれる日本語の国に生まれたのは幸せです。
長年パリ郊外でお暮しですが、未亡人の一人暮らしはいかがですか。
アパート住まいならさほど問題ないのでしょうが、2017年以降、覆面をした空巣狙いが裏庭から侵入、ドアもナタで壊され、今年は2回、夜中、ゴツイ男にナイフで襲われ、最後には2階の屋根を壊される被害を受けました。コンピュータ2台、主人が弾いていたチェコ製を含むバイオリン3台、母の貴重品やゲランの香水、ブランド品も盗まれました。空巣泥棒のグループに狙われているのだと思います。何回被害にあったことか!保険会社にも契約を断られました。警察も「またか…」とあきれかえるほど。日本人滞在者は狙われやすいのでしょうか。1人で家にいるのが怖くなり、8月から付近のホテル住いをしています。1泊65€ ~ 100€の宿泊代はばかになりません。早くこの家を売って他所に移り住もうと思っています。
長年住みついたパリ郊外ですが、主人の遺灰の一部はペールラシェーズの〈思い出の庭〉に、残りの遺灰は奄美大島の海に撒いてやりました。