フランスとの国境沿いのスペイン・カタルーニャ自治州の州議会が10月27日、独立を宣言した。中央政府はすぐにプッチダモン州首相や州政府幹部を更迭し、「反逆罪」容疑で逮捕状を出した。事実上独立国家としては機能していないが、独立運動がここまで発展した事態は欧州で近年例がなく、衝撃が走った。
カタルーニャ自治州は10月1日に住民投票を行い、投票者の90.18%が独立を支持(投票率は42.38%)。これを受け州議会は27日、独立決議を採択。独立派の市民が議会前で歓喜の声を上げる中、独立を宣言した。しかし中央政府は憲法に従い州政府の自治権を停止し、州議会を解散。プッチダモン前首相や州幹部に、最高で懲役30年の刑に科される「反逆罪」で逮捕状を出した。前首相はマルセイユを経由してベルギーに出国。ベルギー当局は前首相に出国禁止などを命じ、スペイン当局が出した逮捕状を執行するか検討している。
ピレネー山脈のすぐ向こう側のカタルーニャ自治州の独立宣言を、仏メディアは大きく報じている。主要紙の社説は先行きを懸念し、ル・フィガロ紙は、不条理への旅路、リベラシオン紙も、独立という熱情が理性に勝った結果で、最悪の事態は避けられないだろうとした。ル・パリジャン紙は、昨年の英国EU離脱に次ぎ、EUの一体性を脅かす事態だと警鐘を鳴らした。
一方、仏南西部で、17世紀までカタルーニャに属し「北カタルーニャ」と呼ばれる地域の中心都市ペルピニャンでは11月7日、独立宣言を支持し、マドリッドで拘束されているカタルーニャ自治州の独立派幹部の解放を求め2千人が行進。マクロン大統領は、独立への手続きがスペインの法律に則っていないなどとして、中央政府への支持を表明。EU各国の首脳も総じて中央政府を支持しているが、プッチダモン前州首相が逃亡先に選んだベルギーは、93年に対立が続いていた2地域を分けて連邦制を導入しており、今後の対応が注目されている。
仏国内でも長年、コルシカ島やバスク、ブルターニュ、アルザス地方で自治や独立を目指す「地域主義(Régionalisme)」運動が続き、コルシカでは今年の総選挙で独立派政党が圧勝。北イタリアでも10月22日、自治強化を問う住民投票が行われ、強化派が勝利。欧州の地域主義は具体化の動きをみせている。極右政党の台頭と並行し、自らの殻に閉じこもろうとし、極端な考えに惹かれる気運が高まっているのかもしれない。(重)