ある夏の日の夕方、7歳の少女、アマンダ(イゾール・ミュルトリエ)は待ちぼうけをくらっている。迎えに来るはずの叔父のダヴィッド(ヴァンサン・ラコスト)が現れないのだ。慌ててやって来るダヴィッド。彼は、短期貸しアパートの管理や公園の植木の世話などの仕事をハシゴして暮らしている。ダヴィッドの姉、アマンダの母、高校の英語教師をするサンドリーヌ(オフェリア・コルブ)が帰宅する。彼女はシングル・マザー。母娘の繋がりは深い。遅刻してアマンダを待たせたダヴィッドは姉からこっぴどく叱られる。…といった日常風景が活写される。姉弟は、イギリス人の母(グレタ・スカッキ)に見捨てられたという思いが強い。最近母と連絡をとっている姉が3人でロンドンへ行こうと提案する。アマンダははしゃぐが、ダヴィッドはイマイチ乗り気ではない。
そんなある日、突発的にとんでもないことが起きる。サンドリーヌがテロに巻き込まれ命を落とす。映画はテロの様子も彼女の亡骸もいっさい見せない。テロに対して何の言及もしない。肝心なのは遺された人々が、どう生きてゆくかだ。ダヴィッドが最初にしなければならない任務は、アマンダにもう母には会えないのだと伝えることだ。そして果たして23歳のダヴィッドは姪の法的後見人という役目を引き受けるのだろうか?
監督のミカエル・アースは前作の『この夏の気持ち/Ce sentiment de l’été』(2016) ですでに大注目を浴びている。大切な人を亡くした人が前後の脈略なく突然涙をこぼす。こういった描写が極めて素晴らしく、こちらも思わず胸を詰まらせる。泣かせる演出など皆無。素直に観客は登場人物の気持ちに寄り添ってゆけるのだ。『アマンダ/Amanda』は 11/3に閉幕した東京国際映画祭で見事グランプリと脚本賞に輝いた。また、当代若手俳優で一番人気のヴァンサン・ラコストの演技が繊細で本当に素晴らしい。是非、鑑賞して欲しい。公開は11/21(水)。(吉)