
10月末から11月初めにかけてフランスでは文学賞の受賞者が次々に発表される。最も権威あるゴンクール賞は11月4日、ロラン・モヴィニエ氏(58)の『La Maison vide(空っぽの家)』に授与された。
モヴィニエ氏は1999年の第1作目の『Loin d’eux』で注目を集め、それに続く作品でも数々の賞を受賞しており、今回の受賞はむしろ遅すぎるくらいと言われる。受賞作は、なぜ自分の父親が自殺したのかという疑問を解くため自身の家族の物語をベースにしながら、新たな物語を再構築したもの。小説では、自殺の原因は祖父母の生まれる前からあり、それは数学的理論のように緻密にあらかじめ計画されたものだということが明かされ、4世代にわたる壮大な家族の物語がつむがれている。

3日に発表されたフェミナ賞はモーリシャス人のナターシャ・アッパナ氏(52)の『La Nuit au cœur』。ドメスティック・バイオレンス(DV)の連鎖にからめとられた3人の女性について語る作品。この物語設定は、野蛮で嫉妬深い30歳年上の男性の影響下にあった17~25歳の作者自身の経験にも裏打ちされている。近年、DVや性暴行が社会問題になっている仏社会を反映してもいる。作者は、19世紀にモーリシャス諸島で奴隷に代わる労働力となったインド移民を描き、自身の出自や社会や家庭の暴力、閉塞感の描写を第1作から描いてきた。高校生のフェミナ賞などこれまでに数々の賞を受賞している。
5日にメディシス賞を受賞した『Kolkhozeコルホーズ』(エマニュエル・キャレール氏[67])も家族の物語だ。作品は、ロシア専門の歴史家、政治家、アカデミー・フランセーズの終身事務局長だった母親エレーヌ・キャレール・ダンコース(1929-2023)の物語を中心にすえた壮大な家族年代記。作者と母親の間の絆を模索しつつ、亡くなった母親との関係が自身に与えた影響を浮かび上がらせる。この作者の他の作品と同様、事実に基づいたエッセイなのか、フィクションなのかという疑問が呈される作品だ。フェミナ賞、ルノドー賞を過去に受賞している作家で、映画監督、脚本家でもある。
今年は7日、第1回目のレスビアン文学賞「グウィンクール賞 Prix Gouincourt」(ゴンクールをもじって。グウィーヌgouine とはレスビアン)がファティマ・ダース氏の『Jouer le jeu』ほか計4作品に授与された。レスビアン文学の多様性を反映して複数の作品に授与したと主催者。
【その他の主な賞】
ルノドー賞:『Je voulais vivre』アデライド・ド・クレモン=トネール氏
アカデミー・フランセーズ文学大賞:『Passagères de nuit』ヤニック・ラアン氏(ハイチ)
